執筆者:相川 知子(スペイン語通訳者、異文化コミュニケーター、在ブエノスアイレス)
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスは南米のパリと呼ばれます。それに匹敵するパリのオペラ座的なブエノスアイレスのコロン劇場はミラノのスカラ座も加えて、世界三大劇場と呼ばれています。
実はテアトロ・コロンは最初は、五月広場(プラサ・デ・マジョ)に建設され、1857年に、最初のオペラとして、ヴェルデイの「ラ・トラヴィアータ」(椿姫)が上演されました。現在のテアトロ・コロンは、元々鉄道駅だった場所Libertad entre Tucumán y Viamonte に位置します。1899年に建設が開始され、1908年に完成しました。5月25日が初演日でしたので11年前になります。ヴェルディのエジプトをテーマとした「アイーダ」のオペラが初演作品です。最初の設計者は大統領府を作ったフランチェスコ・タンブリーニでありますがその後すぐ弟子のヴィットリオ・メアノになります。メアノは国会議事堂の建築者でもあります。アルゼンチンのという2人の著名なイタリア人建築家です。
しかし志半ばにメアノも死を遂げ、最後はベルギー人建築家のフリオ・ドルマルJulio Dormalが最後を仕上げました、そのためヨーロッパのいろいろな建築形式が取り入れられたエクレティコという折衷様式です、2006年から10年にかけて改修工事が行われ、現在の座席数は2,487席、立見席は1,000名となっています。
上記の理由からコロン劇場の正面玄関はよく7月9日大通り側だと思われるのですがこちらが開通したのは1937年ですから劇場が出来てからしばらく経っています。しかしメトロブスというバス専用レーンがこの大通りにできるまではよく野外イベントでこちらのCerrito セリート通り側にプロジェクターで映像を投影することなどもありました。
内装も当時のアルゼンチンの栄華がわかり、イタリアやイギリスから取り寄せた資材で建築されています。また当時はイタリア語でそのまま多くのブエノスアイレスの人は理解ができたのです。そして値段も違い、階層も違いながら多くの人が劇場に詰めかけた歴史なども垣間見ることができるので、ブエノスアイレスに来られた時は、必ず訪問されることをお勧めします。
コロナ禍で一年半中断されていましたが、2022年シーズンは例年どおり、3月に始まり、12月にくるみ割り人形のバレエで終わります。イタリアのオペラ・シーズンは12月に開始、5月に終了ですから、北半球と南半球の季節の違いをうまく利用している感じです。
シーズン中には、オペラの演目が7本予定されており、最初の公演は、プッチーニの「ラ・ボエーム」で、その他ヴェルデイの「ナブッコ」、ドニゼッティの「愛の妙薬」、プッチー二の「トスカ」、レハールのウインナーオペレッタの「メリー・ウイドー」などです。イタリアオペラが多いですが近年英語の物もあり、また字幕が上の方にスペイン語で投影されます。そして新しい世代にアピールする演出の変化もあります。
その他にもバレエ公演が7回、ブエノスアイレス・フィルハーモニーの公演が19回、日本でも良く知られているマルタ・アルゲリッチのリサイタル等も予定されています。
コロン劇場、2022シーズン3月から開始です。最初のオペラはプッチーニのラ・ボエーム LA BOHEME、3月15日から開始。3月19日土曜日午後8時からの回に行ってまいりましたが、あまりにも感動したので報告します。
インターネットで事前にチケットを取ります。購入するにはこちらのページから日時を選べば、購入画面に飛ぶことができます。
URL:https://teatrocolon.org.ar/es/temporada-2022/opera/produccion/la-boheme
携帯に入っているデジタルチケットを提示して入館。その後、QRコードをスキャンしてもらってエレベーターで5PISOまで行きます(階段もあります。アルゼンチンの5PISOは日本の6階です)。
はい、こちらへどうぞ。こちらが席です。番号が振ってあります。ひとり1150ペソ。劇場は馬蹄式になっています。(購入にはページの登録が必要です。)私が好きなのはTertulia Primera fila segundo lateralの向かって左手の5PISOのところです。上から舞台手前のオーケストラボックスも眺められ、キュープラにも近い。
もちろんおしゃれしますが、そこまでおしゃれしなくても大丈夫です(地下鉄で行けるレベルです)。さらにメイン玄関を通らずにVIAMONTE通り側から入ります。向かって右も同じ様子なのですが実は、喫茶室やお手洗いに行くには左が便利だし、なんとなく私には見やすいですし終わったあとに見るバチカン広場もステキです。喫茶室は1階分おりるだけです(4階)。ちなみにどこの席も左が奇数、右が偶数になっています。
実はラ・ボエームは先般水村美苗さん著の母の遺産をスペイン語にLa herencia de la Madre (ADRIANA HIDALGO EDITORA)に訳したときに、何度も「私はミミ」などの歌の名前や多少の内容が出てきたのでいつか見に行きたいと思っていたのです。
Tertulia Primera fila segundo lateralはひとり1150ペソ(約10ドル)と安く、隣の席は30ドルなのでお得です。もちろん、一番下は1万から1万5000ペソ(100から150ドル)で、見やすいのには間違いありません。私たちは、劇場後の夕食が楽しみなのでそちらに力を入れることにしています。
私の特別なレストラン #ZumEdelweiss コロン劇場終了後に行きましょう。http://blog.livedoor.jp/tomokoar/archives/52248187.html
なお、内容は……インターネットにどこにでも載っています。今は日本語でも調べられて便利ですね。重要なのは、オペラを見に行くには言葉がわかるかわからないにかかわらず、進行を頭に入れておくことが重要です。進行は歌に従ってゆっくりなのです.その間に舞台の設置、衣装、歌、曲、演奏すべて楽しむのであまり字幕に構っている暇はないのです。ところで娘の感想は、どうしていつも死んじゃうの? そうなんです。昔の人は早く亡くなるし、オペラってよく誰かが亡くなりますよね……
それから愛に生き、また気ままに自由であったり不自由であったり、永遠の人生のテーマで歴史的にも昔も今も同じようなものだなと思わせてくれます。また時代考証に根ざした衣装もすてき。前回に比べて今回はかなりクラッシックで押しとおしていましたが舞台に100人ぐらいいるときがあり、圧巻です。ただただ美しい世界で私にはアルゼンチンの世界の歴史を再確認し、リラックスができる最高の場所です。
オペラやコンサートを見なくても劇場の見学ツアーがあります。コロナ禍で中断されていましたが、コロン劇場のホームページによると、午前11時から15分ごとに組織され、最終は16時45分。英語ツアーは13:00と15:00の2回のみ、他はすべてスペイン語によるツアーとなっています。ご用命があれば日本語でご案内することができます。料金は、一般3,800ペソ、居住者1,800ペソです。
ツアーのルートは、フォアイエ(Foyer)→胸像のギャラリー(Galeria de Bustos)→黄金の間(Salon Dorado)→劇場内(Sala Principal)
下記の写真はサロン・ドラドこと、黄金の間です。その昔は喫煙が可能でもあったので真っ黒だったのですが、修復後は金色に輝いています。天井のフレスコ画もオリジナルで素晴らしいです。このエピソードなども楽しいです。
なお、新しいのはコロン劇場工場見学です。元々コロン劇場の地下はオペラやバレエなどの舞台装置、衣装はかつらから靴に至るまですべて自社工場で作ります。しかしながらリニューアルしてから館内ツアーで訪問できなかったのですが、さらに、コロナ禍はここでマスクを縫っていたり、PCR検査会場になった変遷を経て、これはボカ地区に設営されていて週末のみ見学に行くことができます。オペラの舞台装置などもあり、さながら自分が舞台の主人公になったような写真を撮ることができます。
こちらで様子を見ることができます。 https://www.youtube.com/watch?v=LSiAH3Ay_9g
金、土、日、祝日 正午から午後6時まで開館 正午から午後2時45分 ガイドツアー午後3時から5時45分まで自由見学
入場料購入はコロン劇場のページから https://www.teatrocolon.org.ar
所在地 Colón Fábrica: Av. Pedro de Mendoza 2163. La Boca, Ciudad de Buenos Aires.
サロン・ドラード
では最後にコロン劇場攻略マナーを紹介します!
私はオーケストラと舞台の歌手とのコミュニケーションの様子を見るのも大好きです。次は7月3日のカルメンのバレエに行きます。このときは下のボックス席になります。その他、日中にリハーサルなどいつも行っておりますので詳しいですから必要なときはご相談くださいね。よかったら一緒に観劇しましょう!
(写真はいずれも筆者撮影または所有。一部コロン劇場プレス提供)
以 上