連載パナマ・レポート25:ルベン・ロドリゲス 2022年5月分 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載パナマ・レポート25:ルベン・ロドリゲス 2022年5月分


連載パナマ・レポート25: ルベン・ロドリゲス 2022年5月分

執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科助教・パナマ共和国弁護士)

I.新型コロナウィルスの現状

 5月26日時点で、パナマにおける新型コロナウィルスの感染者は839,746人、死亡者は8,236人、回復者は802,481人と確認された。政府は、4月24日から12歳以上の抵抗力が減弱した患者にワクチン4回分を提供している。その他の国民は任意で受けることができる。パナマ政府は、2021年1月中旬に接種計画を開始し、2022年5月23日時点では約819万9千回分のワクチンが提供され、2回分の接種率は16歳以上人口の78%を上回っていると発表した。

 また、政府がサル痘への対応を準備していることを明らかにした。ゴルガス記念研究所は、サル痘の検査を行うため必要な施設を用意し、保健省は、国境での入国管理を強化している。また、陽性反応が確認された場合、病院で隔離できるように個室を備えている。現時点では、パナマ、コロンビア、コスタリカでの陽性反応は確認されていない。

II.政府

A.マルティネリ兄弟 

マルティネリ元大統領の息子であるリカルド・マルティネリとルイス・マルティネリは北・中・南米で行われたオデブレヒト汚職事件に関与した容疑を認め、5月20日に有罪判決が言い渡された。ニューヨーク州の連邦最高裁判所は、禁錮33ヶ月の判決を下したが、グアテマラとアメリカで逮捕された期間を考慮し、13ヶ月となった。弁護人を通して、マルティネリ兄弟は、父であるマルティネリ元大統領から資金洗浄を行うように命令されたと述べている。これに対して、マルティネリ元大統領はコメントを発表していない。

B.ハーディング議員の婚姻 

与党PRD党のカイラ・ハーディング議員は、5月29日にガーナのBart-Appiah王子と、パナマで結婚することが分かった。ハーディング議員とBart-Appiah王子はコスタリカで開催された国際イベントで出会い交際が始まった。しかし、その後、ハーディング議員は、ガーナに公式訪問を行ったため、批判の声がある。ハーディング議員は、リヒテンシュタインのアンジェラ妃に次いで、パナマ人史上二人目の妃となる。

III. 経済

A.海事業界 

 パナマ運河局は、5月20日に、新しい通航料に関する公聴会を開催した。運河局は4月上旬に、2023年1月からの通航料を発表し、今回の公聴会では利害関係者から意見を受けた。提案されたモデルは手続きの簡略化を目的とし、通航料の数は430から60に減らすと発表されている。リカウテル(Ricauter)局長は、中国サプライチェーンの問題とウクライナ戦争の影響は運河にも及んでいることを明らかにした。リカウテル局長は、世界サプライチェーンの一部であるため、国際事情を考慮し、ビジネスモデルを考えると述べた。

 日本船主協会の友田副会長と山上企画部副部長は、パナマと海事業界との協力関係を強化するため、5月20日にパナマを訪問した。パナマ海運庁のアラウズ長官は、友田副会長と山上企画部副部長と共に、海事を専門とするパナマ国際海事大学およびコロンバス大学を訪ね、学生と対話した。

B.流通業界 

 コロン県を中心とする流通業界の発展が促進している。コロン県にあるマルガリータ島では、500万のTEUを取扱う新たな港が建設されていることが判明した。建設は約16%進んでいたが、現在は中止となっており、2022年後半に再開予定である。2021年の輸出は約25億ドルを上回り、2021年の輸出は30億ドルを超えた。これは過去最高の金額となる。パナマの主な輸出相手は、アメリカ、日本、中国、韓国、スペイン、ドイツ、オランダである。2021年9月までのラム酒、紙加工品、木材の輸出量は前年同期比40%増加している。

 さらに、アメリカのバイオ燃料企業であるSGP BioEnergyは、70億ドルを充当し、コロン県で世界最大のバイオ燃料の生産と流通センターを建設し、2024年に運営開始すると公表した。元プロ野球選手マリアノ・リベラは、公式発表に参加した。昨年、国際宅配便のDHLは、パナマから出発するアメリカとチリを繋げる新ルート開始を発表した。また、アメリカ人投資家のウォーレン・バフェットの会社であるPilot Travel Center/Tartan Oilは、コロン県のTelfers流通センターを利用し、100万の石油用バレルの保管、およびその製品をカリブ海と南米の地域へ流通することを発表した。

C.観光のインセンティブ

 パナマ国会は、4月下旬に観光促進に関する法を改正する法案第789号を可決した。法案第789号は、一定の地方で観光を発展させる企業に、建設や土地取得に利用した金額の60%から100%までの税金免除を認める。法案第789号の定めるインセンティブは、国の歳入を利用し、特定の少人数のために特別な免除制度を設けているため、パナマ商工農会議所(Cámara de de Comercio, Industria y la Agricultura de Panamá)を始め、コルティソ大統領に法案の拒否を求めている。エスキルデンセン観光相は、批判に対して、条件を満たすすべての企業は、観光への投資から三年経過後、インセンティブに申請できると説明した。現在、観光業界は、GDPの11%を占めている。

IV. 外交

A.アメリカ合衆国のファーストレディーの訪問

 アメリカのファーストレディーのジル・バイデンは、ラテンアメリカとの協力関係を強調するため、5月18日から、エクアドル、パナマ、コスタリカへの公式な訪問を行った。バイデン氏は、5月20日にパナマのファーストレディーのジャスミン・コルティソと対話し、エイズ感染者の病院を訪ねた。

以    上