『越境と冒険の人類史 -宇宙を目指すことを宿命づけられた人類の物語』 アンドリュー・レーダー - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『越境と冒険の人類史 -宇宙を目指すことを宿命づけられた人類の物語』  アンドリュー・レーダー


火星移住計画を促進する航空宇宙メーカーSpaceXでミッション管理者を務めている航空宇宙技術者の著者が、なぜ人類は火星を目指さねばならないかは、人類の未知なる世界への飽くなき探究心からで、見知らぬ土地への旅が文明を発展させてきたからだとの主張を説くべく、アフリカからの最初の人類が南北アメリカ大陸等へまで放浪し、海洋を渡ってポリネシアに広大な文化圏を成立させ、地中海を文化の「高速道路」とした古代エジプト人、フェニキア人、ユーラシアに越境した古代ギリシャ・ローマ、その欧州に北からやって来た「蛮族」たちを概観した後、第7章「初期の遭遇」でサツマイモ、ココヤシの伝播、ポリネシアから南米にコロンブス以前に到達したのか、逆にネイティブアメリカンが太平洋に乗り出し可能性をヘイエルダールの実験航海を紹介しつつ示唆し、第11章「略奪と黄金」でコロンブスのインド到達との錯誤からアメリカ大陸へのスペイン等の侵入、コルテスのアステカとピサロのインカ征服と黄金等の略奪、奴隷制度持ち込み、インドへの航路開拓競争からのマゼランの世界一周航海などを物語っている。

これらの他にマルコポーロの東方への旅、15世紀の明による鄭和の巨大艦隊の派遣や北米の探検と開拓、南太平洋の島々や北西航路発見航海、北極圏と南極大陸到達、飛行機による空路開拓への挑戦について述べた後に、後半の9章は著者の専門分野である宇宙への旅、火星はじめ宇宙旅行への道、地球外生命体の可能性などまで解説している。

〔桜井 敏浩〕

(松本 裕訳 草思社 2022年4月 496頁 3,500円+税 ISBN978-4-7942-2578-8 )