ホンジュラスで長く国際協力機構(JICA)技術協力専門家、国立教育大学客員教授等として在住し、現在も現地日本大使館に在勤してホンジュラスに通暁した編著者ならではの現代ホンジュラス紹介。中米をよく知る研究者をはじめ様々な分野の執筆陣を擁したこのシリーズの最新刊である本書は現代に絞っており、2014年に出版された『ホンジュラスを知るための60章』( 一般社団法人 ラテンアメリカ協会 (latin-america.jp)と合わせ読むことで「ホンジュラスを知るための115章」となる。
ホンジュラスは2021年の大統領選挙時に台湾との外交関係継続が論点の一つとなったこと、北米への移民キャラバンを輩出して国として米国との関係が注目されているが、本書では政治・経済、開発・環境問題、国際関係を、移民の状況、それらの背景にある制度・社会、文化などとともに解説しており、日本とホンジュラスの関係もNGOによる母子保健の改善や日系米国人のスポーツ振興による少年達の暴力組織入り阻止の取り組みのほか、高品質コーヒー生産支援などで紹介している。貧困と暴力の横行、米国への移住希望者の増大などの問題の根源である経済の不平等、汚職問題へのアプローチの難しさを、米国のバイデン政権になっての試行を紹介し、これまで根本的な問題解決に努めるよりは対処療法でしか行ってこなかった国際機関に苦言を呈しているが、根源の一つにはホンジュラス政府のガバナンスの脆弱性にあると編者は指摘している。
〔桜井 敏浩〕
(明石書店 2022年7月 324頁 2,000円+税 ISBN978-4-7503-5417-0 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2022年夏号(No.1439)より〕