執筆者:相川 知子(スペイン語通訳者、異文化コミュニケーター、在ブエノスアイレス)
アルゼンチンで日本の方が面倒、と思うことの一つがチップの習慣です、でも、これは日常活動の潤滑油ですから必要です。スペイン語でプロピーナpropinaと言います。 もちろん必要ないことに必要なく払うことはありません。
ホテルなどやってもらったことのお礼
ホテルなどではベルボーイ、受け付け、そして、喫茶店やレストラン、チップを払うのが普通のマナーです。要求するのは逆にマナー違反ですから、あまり執拗な人は私も嫌うことはありますが、普通にホテルでは、荷物を運んでもらう、出してもらう、タクシーを呼んでもらう、何かを調べてもらったり、尋ねたり、予約などの手配をお願いしたら、お世話になりました、の意味で、あなたには特別よ、という感じでプロピーナを渡しましょう。
ホテル
ホテルのレベルにもよりますし、してもらうことにもよりますし、その関係性にもよります。普通に日本からのビジネス出張で泊まる高級ホテルなら、荷物を運んでもらったら、だいたい1ドル検討でそのときの通貨のお札にも寄るでしょう。2個なら2ドルとかそういう杓子定規ではありません。同じでもだいじょうぶですが、もっと変わったことをしたとかなら増やしてあげてください。でも、実際は「適当」であり、「適度」です。
コンサート
コンサートなどでも、席に誘導してくれる人にプロピーナを渡します。実は渡さないとプログラムがもらえないのは事実です。場所にもよります。普通のとこなら、だいたい入場料の一割よりう少し少な目程度でいいと思います。まあコロン劇場の上の階の方なら、1ドルぐらい、下のいい方の席なら、二人で3から5ドルぐらいでしょうか。(2022年7月現在500ペソを2人分で渡しました)
レストラン・喫茶店
レストランでは通常会計の10%がプロピーナです。ただし、カードで支払うのはアルゼンチンではまだ馴染みがありません。カードで支払いでもプロピーナは現金です。なお、どうしても現金がない場合は含めてもいいかたずねてみましょう。最近はそういう支払いの方法も少しずつ出てきています。特別のサービスの場合はまた考慮に入れてあげましょう。
デリバリーなどマンションで
デリバリーならいらない!と思っている人も多いらしいですね。普通の配達にはあまり渡しませんが、特にコロナ禍では食べ物関係は注文の10%を渡して食料品関係で働く人々を支援しました。今は5%ぐらいでいいと思います。
スーパーの配達も少し、ありがとうという気持ちを伝えます。
毎日お世話になるマンションの管理人も同様です。何かお願いして少しずつでもいいですが、もしくはまとめてたまに払っておくと対応が違うし、その方が「安く」つくこともあります。またこれからの年末必ず、お歳暮的なものを渡す(物でもお金でも)習慣があります。簡単なのはスーパーにクリスマスボックスが売っていますからご予算に合わせてできます。または心付けでいつもありがとうと渡します。高級ワインなどを渡すこともありますが実はその高級の半分以下でいいからお金がいいこともあります。
いくら渡したらいいか
日本の方はいつも杓子定規に考えるので、値段表みたいなのをほしがるのですが、そのケースによるので一概にいうことはできません。
いつでも些細なことは1ドルぐらい/何かの10%を基準にしたらいいと思います。そして、それ以上なら、また考えます。また細かいのがなかったら、後でね、と言って、二つ目の用事で渡したり、私はホテルにお客様が数人いらっしゃって、出たり入ったりするので、いちいちは面倒ですから初めから、最後に全部利用する分ぐらいをベルボーイにも、またレセプションにもまとめて渡しておくとよくいうことを聞いてくれて便利です。
こういうことを習慣にしておくと、ホテルのちょっとしたところや、部屋に何か忘れていたりしても、思い出してもらっていますから、助かること大です。意思疎通もよくなってきます。ムカマことハウスキーパーさんにも顔を見たら、まとめて渡していますし、そうそうサルタの素敵なワインテーマホテルでは、渡したらお土産にもなるワインシャンプーなどを余分にいただき、嬉しかったです(笑)
いろいろ頼むくせに全然チップを渡さないので、来てよ!と言っても、さっと手伝いに来ないとかの不自由も防げます。(ちゃんとあげない人だと理解すると、言うこと聞かなかったりちょっといじわるされることもなきにしもあらずです。。)ちゃんと働いてくれないと嘆くだけではなく、それをできるように手伝って上げましょう。
皆さん普段の給与がとても低いのです。ですから、例えばウエイターは給与分ぐらいをチップで稼いでいると言われます。日本のようにサービスを当たり前のように、とはちょっと違います。もちろん気が利いてよくやる人もいます。そういう人は報われるのが当然でしょう、という考え方です。
独りでばたばたと慌てないで、人に頼む、人を動かすのがアルゼンチン社会ではスマートです。それはきっと、会社であっても、社員や部下に、心づけで季節の贈答や、ちょっとしたお土産を渡しておくとコミュニケーションがうまく行くこと間違いありません。
日本人は苦手、と言われますが、そうではありませんよ。また多くが実は「気持ちの問題」なのです。
私が今まで一番感動したのは、国際会議ご出席で会議中のウイスパー同時通訳(ささやいてお客様のちょっと斜め後ろ目に位置して通訳します)をしていたのですが、受け付けなどの世話をしてくれる女性達にお礼の気持ちを伝えたいがお金だったらいくらか、もしくは何か物か、という相談がありました。その場合は私は女性なら誰でも喜ぶボンボン(チョコレート)をお薦めしました。3日ありましたが、いつというタイミングがいいかということでしたので、2日目のはじめに、しました。そうすると、残りの日程皆元気に働きますよ、と。10人いたので、「それじゃ、12人分買って」と言われまして買って来たら、余るはずの2人分のチョコレートを私にくださいました。
別のレセプション通訳では、会が進行し、スピーチがあり、そして、宴会になりましたが、皆さんひっきりなしに出席者の方からのご挨拶でお客様のところに行列状態でした。私もずっと立ちっぱなしで、ご挨拶を訳していました。ある程度行うと、こっそり私に「あなたも疲れたでしょうから、おいしいお寿司の屋台もあるし、ゆっくり食べて行ってくださいね」とおっしゃって、そして、皆さんに「私も長旅で疲れましたから、申し訳ないが、休ませてください」と挨拶され、お礼を言われて会場のホテルのお部屋に引き上げられました。このときは仕事が早めに終わり、またおいしい御寿司も食べられてプロピーナをいただいた気分になりました。