7月4日に掲載した本レポート(上)で考察したように、ロシアによるウクライナ侵攻の煽りを受け、ラテンアメリカ・カリブ(LAC)地域では、エネルギー、食料品、肥料価格が上昇し、これが今まで抑制されていたインフレ率を押し上げ、金利上昇を招き、経済成長を停滞させる。だが、この紛争がLAC諸国に与える影響の程度は国によって異なる。特に、エネルギーや食料の供給を輸入に頼る度合いが高い国では国内政情が複雑になるかもしれない。
ロシアのウクライナ侵攻は、国際社会およびLAC地域における米中ロ間の「陣営作り合戦」を複雑にするという地政学的側面もある。また国際秩序が変動する現在、LACにはBRICSやG20(主要20か国・地域)のような国際組織における地政学的バランスを巧みに操りながら、独自の、したたかな「陣営作り合戦」を展開しているように見える国もある。そこで本レポート(下)では地政学的視点から、LACの対ロシア・ウクライナ貿易に紛争が及ぼす影響、国連および米州機構におけるロシアによるウクライナ侵攻非難およびロシア軍の即時撤退を要求する決議案に関するLAC諸国の投票、ウクライナへの軍事介入をめぐってLAC諸国が一貫性のある対応策をとらないことの背景にある外交要因、米国の対ベネズエラ制裁、LACの新しい世界秩序における立ち位置などについて分析する。
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ラテンアメリカ・カリブ研究所レポート「ロシアによるウクライナ侵攻で激変する国際社会(下):ラテンアメリカ・カリブ(LAC)諸国の立ち位置」桑山幹夫