日本貿易振興機構(JETRO) アジア経済研究所の開発途上国研究者37人が、世界35か国・地域で体験した食べ慣れない食材、食習慣・嗜好、調理法の違いや食事作法などを手がかりに、現地社会をより理解めぐるカルチャーショックを綴ったエッセイ集で、同研究所が2018年まで刊行していた月刊『ワールド・トレンド』誌とその後継誌のウェブマガジン『IDEスクエア』に2016~18年の間連載したものを再構成・加筆修正したもの。
ラテンアメリカからは、長く続く物不足とインフレで農民自由市場から商品が消え闇市場で調達せざるを得ないキューバ(山岡加奈子)、トーモロコシ皮に肉野菜を包んで茹でたアジャカを12月に家族総出で作るベネズエラ(坂口安紀)、アンデス高地ではクイ(食用モルモット)が飼育されているペルー(清水達也)、多人種が混交するブラジルならではの国民食フェイジョアーダ(フェイジョン豆と豚の様々な部位の煮込み)(近田亮平)と、うっかり種の部分を囓ると舌に棘がささるセラード(中央半乾燥地帯)の果実ペキー(菊池啓一)の4か国5編(198~227頁)が紹介されている。挿入写真がカラーにしたのは、それぞれの料理の魅力を伝える好配慮。
〔桜井 敏浩〕
(文藝春秋(文春新書) 2022年7月 256頁 980円+税 ISBN978-4-16-661362-5 )