ブエノスアイレスの21歳になるエミリオ・ガウナは、友人のラウセンの世話で
自動車整備工となり、ラルセンと家賃折半でアパートを借り、仲間たちが師と仰ぐ
バレルガ博士を紹介され、理想的な未来像の人物と強烈な印象を受ける。
1927年のカーニバルの日、ガウナは床屋の助言で競馬で大儲けし、仲間たちと
どんちゃん騒ぎをした後に博士の家に押しかけた。3日間のカーニバルの夜、
ガウナはおぼろげな意識の中で仮面の女、魔術師タボアダの娘クララと遭遇するが、
女はいつの間にか消えてしまう。その自らの人生の頂点ともいうべき瞬間を垣間見る。
それから夢のような体験を再現すべく、3年後のカーニバルにガウナは再び競馬で
大勝ちし、夜に仲間たちを引き連れて街に繰り出し、夢幻的な冒険を繰り広げる。
ラプラタ幻想文学の旗手ビオイ・カサーレスによる美しい物語。
〔桜井 敏浩〕
(大西 亮訳 水声社 2021年5月 304頁 2,800円+税 ISBN978-4-8010-0573-0 )