18世紀初頭にカリブ海を中心に猛威を振るった海賊たちが標榜した海賊共和国の誕生から衰退を、“ブラック・サム”ことサミュエル・ベラミー、“黒ひげ”ことエドワード・サッチとチャールズ・ヴエインの3人の海賊と英国王にバハマ諸島から海賊を駆逐するために送り込まれたウッズ・ロジャーズを主人公に、膨大な当時の植民地行政官記録、海軍内部の報告書、航海日誌、手紙や海賊たちの裁判記録を原本まで確認し史実を再現している。
当時のイングランド、スペイン、フランスの植民地の富をめぐる国際関係、戦いを背景に、英国の社会階層、船乗りの処遇などから、英国王室の私掠免許状を持った私掠船の横行、スペイン継承戦争の終結で情勢が激変し、私掠免状の意味が無くなり海軍人員の大量解雇の結果海賊になる者が続出するに至った経緯を述べ、それらの中から真っ先に海賊に転向し後にナッソーに「海賊共和国」を創設したホーニゴールドと彼の副官だった黒髭サッチ、残忍さが際立っていたが部下に指揮権を奪われジャマイカで絞首刑になったヴエイン、海賊の中でも際立って台頭したベラミー、私掠船や奴隷船を指揮し後にバハマ総督を経て海賊撲滅者になったロジャーズのそれぞれの活動と生涯の顛末を語っている。
〔桜井 敏浩〕
(大野 晶子訳 パンローリング 2021年7月 512頁 3,800円+税 ISBN978-4-7759-4251-2 )