連載エッセイ200:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その7 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ200:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その7


連載エッセイ 189

「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その7
メデジン出張の記

執筆者:新井 賢一(Andes Tours Colombia代表 ボゴタ在住)

先日コロンビア第二の都市メデジンに出張しました。前回いつメデジンに行ったのか覚えていない程久しぶりでした。2日間の滞在記録を記したいと思います。

 早朝首都ボゴタを発ち空路でメデジンに向かいました。途中「富士山」にそっくり・まさに「コロンビア富士」とも言える標高5,215mの「トリマ山(Nevado del Tolima)」や、噴煙と万年雪が同時に見られる標高5,321mの活火山「ルイス山(Nevado del Ruiz)」の姿が機内からはっきりと見えました。

今まで機内からは何度かルイス山は見た事がありますが、トリマ山を間近に見たのは初めて・しかもルイス山と両方見たのも勿論初めてでした。この日のフライトは車よりも揺れが少なくまるで宙に浮いているような巡航飛行だった事もありカメラのピントがバッチリ合い、とても幻想的な光景でした。飛行ルートによる為保証は出来ませんが、早朝にボゴタを発ちメデジンに向かうフライトでは左窓側に席を取るとこれらの姿を見る事が出来るかもしれません。

今回のメデジン訪問目的の詳細理由は割愛します。主たる訪問先は「動物園」でした。メデジン空港から市内へは長いトンネルが開通し、以前は山道をくねくねと曲がりながら市内へ向かっていましたが、現在はトンネルの開通により時間が短縮されルートも快適なものになりました。そして訪問したのは2020年までは「サンタフェ動物園(Zoologico Santafe)」の名前で現在はParque de la Conservacion(直訳すると保護公園)です。

園内敷地の約半分はコロンビア国内に生息している希少種や絶滅危惧種の動物達が暮らしているエリアです。ここでは怪我を負ったり絶滅の危機にある動物達を保護し、且つ一般公開しています。正確な根拠はないのですが係員曰く保護を主目的とした動物園は世界でもここメデジンともう一つしかないとの事です。なるほど確かに園内をくまなく歩くと日本ではまず見かけない動物達の姿に接します。

 保護されている各動物達は説明版(スペイン語表記)により詳しく知る事が出来、希少種は黄色・絶滅危惧種は赤のマークでそれぞれ案内されています。南米大陸・そしてコロンビアには固有種も含め数多くの動物達が生息し、コロンビアは鳥類及び蝶の生息数ではそれぞれ世界トップレベルですが、他方絶滅が危惧される動物達もいる事をここで知らされます。

 肌の一部が赤いこのミニ猿はパナマ及びコロンビアの太平洋岸部にのみ生息している絶滅危惧種の動物です。この保護公園では多くのサル達が生活していますが一部は絶滅危惧種に指定されていて、自然破壊の現実を感じました。この自然公園ではここではご紹介出来ない別の動物の姿を見る為にボゴタから出張しました。それについても割愛させて頂きます。

 メデジンで特筆すべき事の一つに「食生活」があります。首都ボゴタは標高が高い土地柄の為スープなど体を温める料理が多く、全粒の米をよく食べます。これに対してメデジンは米も食べますがそれ以上にトウモロコシ粉を使った「アレパ(画像の白く平べったいもの)」が好んで食べられます。パイサ(メデジンを含むアンティオキア地方の別称)」の生活にアレパは欠かせないもののようです。

 左画像はアレパと当地ではチョコラテと呼んでいるホットチョコレートです。パイサは揚げエンパナーダ(餃子に形が似ています)・チョリソ・豚の皮部分を揚げた「チチャロン」などとにかく粉もの系や油をたっぷり使ったものが大好きです。チキンにしてもボゴタは炭火などで焼く「ローストチキン」が主流なのに対し、メデジンではたっぷりの衣を使って揚げる「フライドチキン」が主流で実に多くのフライドチキンの店を見かけます。多くの店は一ピースから販売していて道を歩けばフライドチキンの姿ばかりを見かけるような一角さえあります。ボゴタではここまで油系・粉もの系は食べません。

自分の個人的感想ですが、高たんぱく・高脂肪・高カロリー+油・塩分の高いものが伝統食であるメデジンはコロンビア第二の都市ながら食生活に関してはコロンビア国内きっての「不健康都市」だと思います。それが証拠にという事でもないと思いますが、メデジンの人々はボゴタの人々と比較して明らかに肥満体質が多く、男性は腹・女性は腰から尻周りに顕著に表れています。

 今回のメデジン出張で感じた事ですが、かの地はコロンビア国内で唯一鉄道が市民の足になっていて近代的都市としてもてはやされている一方、市内を走るバスは旧式のものが多く排ガス規制などに考慮しているのか疑問、且つタクシーやUBERなどの利用料金が走行距離と金額との比較では首都ボゴタと比較してかなり割高に感じました。

ホテル宿泊料金も以前はとても割安感を感じたのですが今はその逆で、このレベルでこの金額かという程首都ボゴタと比較して相当割高に思います。メデジンには昨今ヨーロッパなどから多くの観光客が来訪していてその数はボゴタよりも多いのではと錯覚したほどです。それもあるのか、或いは別の理由があるのか分かりませんが日本の一部のバックパッカーの間でメデジンは「聖地」とさえ称する人もいるようですが、私には宿泊料金が安くなく、移動コストも鉄道以外は総じて割高・伝統食も不健康なものが多いのに快適なのかと疑問にさえ思います。

 また、パイサは昔はコロンビア国内では最も優しい性格としてつとに有名でしたが、少なくとも私が滞在した2日間では昔の印象が完全に崩れ去りました。一度や二度なら偶然でしたが、ホテルやレストラン、スーパーなどかなり多くの場面で不愛想・ぶっきらぼうな対応を受け、挙句の果てにはアポイントメントを取っていたにもかかわらず当日完全にすっぽかされ電話やメッセージにも全く応答せず、とんでもない目に遭いました。昔のパイサは堅実・勤勉な性格でしたが印象総崩れです。誤解のないよう申し上げますと、パイサの全てがそうだった訳ではありません。首都ボゴタの人々はドライですがスペイン語を話す外国人に対して「普通」に接します。今回接した複数のパイサ達に普通・良い印象がなかった割合が多かったという事です。

 今回のメデジン出張では色々ありましたが、ともあれ目的自体は遂行しました。次回メデジンに出張する際にはまた好印象を残してくれる事を願っています。その前に絶食してから現地に行かないとメタボ一直線になってしまいそうな気がします(笑)