『世界の食文化 中南米』 山本 紀夫編 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『世界の食文化  中南米』 山本 紀夫編


ラテンアメリカは、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、ピーナッツ、トウガラシ、トマト、カボチャなどの穀類、野菜、香辛料、カカオ、パイナップル、パパイヤ等の果実類や嗜好品のタバコ、コカなど、実に多くの原産地であることは知られている。この広大な地域に、先住民、欧州からの征服者、植民者やアフリカから連れてこられた奴隷、東欧、中東、アジアを含む世界各地からの移民など、様々な文化が融合して多彩な食文化が展開しているのだが、日本では部分的にしか知られていない。

まずは、トウモロコシ、ジャガイモ、マニオク(マンジョカ/ユカ)という三大主食、コロンブス到達以前と以後の食文化の変化、戦前の農村部を中心にしたブラジル日系人家庭の食生活が解説されているが、大きな部分を占めるのは、17カ国20地域の食文化と酒の紹介である。ラテンアメリカの主要国はもとより(ペルーやアマゾンは、さらに地域を区分している)、中米やカリブの島嶼国の知られざる食文化、醸造・蒸留以前の製法で作った酒、メキシコのテキーラやサトウキビを材料とするラムとブラジルのピンガ(製法に違いがある)、移住者が持ち込んだワインに至るまで、現地で長く生活した24人の広範な分野の人たちによる解説は、それぞれが読み物としても興味深い。

〔桜井 敏浩〕

((財)農山漁村文化協会 2007年3月 296頁 3,200円+税)

『ラテンアメリカ時報』 2007年夏号  No.1379  掲載