マヤ文明の代表的な遺跡の一つ、ホンジュラス西部のコパンの発掘調査に長年取り組んできた日本有数のマヤ考古学者が、2000年にコパンの王とみられる墓を発見した。本書はこのコパン王墓と周縁のラ・エントラーダ地域で、これまで著者が行ってきた考古学調査を軸に、発掘を通じてマヤ文明史を再構成し分かりやすく解説したものである。
本書は、マヤ文明の概説の後、発掘を通じて「芸術の都」ともいえる都市構成、周縁部からみた中心としてのコパン王国を概観し、王墓発掘の模様とそれにより推理できるコパン王国の興亡(西暦427〜820年)を検証し、謎とされてきたマヤ王国の衰退、崩壊、滅亡をさぐり、その後も続く調査によって、神秘の解明が進められていることを述べている。
アメリカの大学、研究所が抜きん出た実績をあげているマヤ研究であるが、日本のマヤ研究者の中には著者のように国際的に通用するマヤ考古学者でありながら、日本の大学に帰属したり、支援を受けることなく現地調査に傾注し成果をあげている人もいる。日本人による一大成果であるコパンの発掘調査と遺跡保全に続いて、著者はグアテマラのティカール遺跡の北のアクロポリス保全にも情熱を注いでいる。
(日本放送出版協会282頁2007年6月1160円+税)