フリーダ・カーロ(1907〜1954年)といえば、メキシコの現代を代表する女流画家として、著名な壁画作家であったディエゴ・リベラの妻として、さらにはロシアからの亡命革命家レフ・トロツキーや彫刻家のイサム・ノグチとの奔放な恋でも知られる。日本でも紹介書などが10冊ちかく出ており、メキシコで制作されたその生き方と生涯を描いた映画も公開された。小児麻痺に加え、18歳の時に遭遇した交通事故で満身創痍となり、その後も後遺症に悩まされ、リベラの不倫による離婚など、「自画像」など苦悩の中で描いたシュールレアリズムの独特の絵は、今でも愛好者が多い。
フリーダの絵には、片隅にカタベラ(頭蓋骨)や骸骨が描き込まれているが、それがもつ「死」あるいは「生ある限り楽しめ」ととれるメッセージは、まさしく彼女の姿であり生き様であった。フリーダの生家「青い家」はフリーダ・カーロ美術館となっているが、この近くに住んだことのある著者が、フリーダも聴いたであろうメキシコ音楽を取り上げ、その訳詞と歌の背景を解説しながら、ラテンアメリカ人にとって美術を凌駕する重要な生活の一部である音楽をキーワードにして、この今なお人々を惹きつける美貌の画家の生と向きあった生き様を、メキシコ音楽の数々ととともに読み解こうとしたものである。
(新泉社275頁2007年7月2000円+税)