『黒ダイヤからの軽銀 —三井アルミ20年の歩み』 牛島 俊行、宮岡 成次 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『黒ダイヤからの軽銀 —三井アルミ20年の歩み』 牛島 俊行、宮岡 成次


わが国のアルミ製錬は、電力の高コストその他の問題から短期間で絶滅に近い状態に陥った、日本の産業史上まれな例であり、うち、三井グループの総力を結集して設立された三井アルミニウム工業も1989年に解散した。本書はその20年の社史だが、ブラジルにおけるアルミ製錬計画への進出の経緯と進展についても詳述しており、日本とブラジルの経済協力の実態を知ることが出来る。

1970年代はじめに、日本の業界は国内製錬に見切りをつけ、アルミ資源を海外に求め業界共同プロジェクトが志向された。幹事会社は輪番制で、住友化学がインドネシアのアサハン計画を、三井アルミがアルミナ部門を担当する日本軽金属とともにアマゾン計画を主導した。アマゾン河中流域の豊富なボーキサイト鉱と廉価な水力発電を利用し、河口のベレーン市近郊に、ブラジルのリオ・ドセ社との合弁でアルブラス(アルミ製錬)とアルノルテ(アルミナ製造)事業を立ち上げようというもので、1976年にガイゼル大統領の訪日を機に、海外経済協力基金の出資、輸出入銀行と国際協力事業団からの特利融資を行う“ナショナル・プロジェクト”として行うことで、両国政府間合意、日本政府閣議了解が得られ着手された。しかし、その後ブラジルのインフレ、為替の大幅変動等、日本側の円高の進行、アルミ業界を取り巻く環境の悪化、それらに起因するアルノルテ計画への参加大幅縮小など、実に多くの問題に遭遇したが、現在は日本のアルミ新地金の1割近くを安定供給するまでになり、アルブラスも業績好調で配当を行うまでになっている。

(カロス出版270頁2006年9月 1905円+税)