日本人のブラジル移住百年の歴史の中で異能の知識人として、比類なき学殖と実行力をもって活躍した鈴木悌一(1911〜96年)は、弁護士として東山事業総支配人だった山本喜誉司氏とともに戦時中にブラジル政府に没収された日本人の資産凍結を解除させ、日本移民50周年記念の「ブラジル日系人実態調査」(1964年)の中心として奔走し、またサンパウロ大学構内に日本文化研究所を設立させ初代所長となって、学内に日本研究の拠点確立を推進し、図書館の充実、紀要の刊行などに尽力した。また絵画に打ちこみ、画家の半田知雄らが創設した日系コロニアによるサンパウロ美術研究会(聖美会)やコロニア文学会の会長を歴任するなど、日系社会の学術・文化の分野で大きな業績を残した。
本書は、自身もブラジルでの日本語普及等文化活動に努め、人文研の理事である著者による渾身の伝記であり、経済的成功に背を向けブラジルと日本を文化で結ぼうと、日本人を代表する如き気迫を持って行動した異能の人の生涯を詳細に伝えている。
(サンパウロ人文科学研究所529頁2007年7月※本書は、ブラジル日本人移民百周年記念「人文研研究叢書」第6号”として発行されたもので、市販はしていないが、サンパウロの人文研 centro-nipo@terra.com.br もしくはブラジル日本商工会議所事務局secretaria@camaradojapao.org.brが受託頒布している。本代 50レアル)
『ラテンアメリカ時報』2007年秋号(No.1380)より”