「ブラジルに移住した日本人の人生はすべてドラマになっている」と編者はいうが、1932年から97年に至る間に移住した、無作為に選ばれた年齢も境遇も異なった6人の女性が書いたという異色の移住史。
10歳の時に移住、インテリの父たち家族と開墾の苦闘の中で妹を失った、執筆者中最高齢の85歳。早い時期から商売に転じた人、アマゾンで農場経営に携わり夫とアマゾンを信じて身を捧げてきた生涯だったという人、1965年に邦字紙の記者として2年間のつもりでブラジルに渡ったが、「日本にないモノがあって楽しくて」ブラジルに留まったという現代女性など、6人の執筆者はまったくの素人であるが、それぞれの苦楽の生き様は読む者に深い感銘を与える。
(毎日新聞社 381頁 2007年8月 2000円+税)
『ラテンアメリカ時報』2008年冬号(No.1381)より