現代の人類にとって緊要な課題の一つである貧困削減のためには、基礎教育の普及が効果があると期待されている。開発途上国における教育の発展は、政府ばかりでなく教育を受ける側も重要な主体であるが、今日では経済的貧困層、社会的・政治的弱者がその状態改善のために教育要求の自覚をもち始めて来た。このような弱者たちの要求は、政府と家族の間にある村や地方自治体、そしてNGOといった中間的主体が媒介、援助することが多い。
メキシコとブラジルにおいて、弱者のための教育普及に、政府、地方自治体、NGO等が、どのような課題を掲げ、どのように活動してきたかを、両国での就学促進のための家計補助プログラムの評価、批判的検討、オアハカ州ミッヘ族の3つの村を例にメキシコ先住民地域における競争的な教育発展の事例、同じくメキシコでの先住民2言語教育の理想と現実、ブラジルにおける初等教育の地方分権化とサンパウロのファベーラでの住民運動を紹介することによって解説している。
貧困からの脱却には教育の普及が必須といわれながら、実際にその実現に立ち向かうと様々な問題に直面することがよく分かる。
(明石書店 236頁 2007年10月 4,000円+税)
『ラテンアメリカ時報』2008年冬号(No.1381)より