『プエルト・リコ! カリブのラテントリオ —<トリオ・ボリーンケン>から<トリオ・ロス・パンチョス>』 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『プエルト・リコ! カリブのラテントリオ —<トリオ・ボリーンケン>から<トリオ・ロス・パンチョス>』


パブロ・マルシアール・オルティース・ラモス  関根秀介訳  彩流社 2007年12月 494頁3,800円+税

プエル・トリコ出身の著者も学生時代からトロピカル音楽に傾注してきた訳者も、大学卒業後長く貿易業務に従事しながらラテン音楽に親しみ研究を続け、出来上がったのがこの“トリオ音楽”論である。プエルト・リコの大衆の中に深く根を下ろした三重唱とギター演奏のグループは、単純なものから複雑なものへ、いろいろな音楽を交え創造と融合し進化し、1944年の「トリオ・ロス・パンチョス」によって近代のコーラスとギターアンサンブルの一つの極地に至ったという。

本書は、プエルト・リコの庶民の集まりで盛り上げていたトリオ音楽が、ラジオ放送によって多くの人に認められ、プロ化していった過程を検証したもので、20世紀初頭のプエルト・リコと周辺諸国での音楽事情、トリオの先駆者たちとカリブの音楽、特に歌とコーラスに大きな影響をもたらしたキューバのリズム「ソン」、ラジオ放送の開始による多くのトリオ・グループの登場、そして19444年にニューヨークで産声を上げた、メキシコとプエルト・リコの優れた才能をもつ演奏家・作曲家によるトリオ・ロス・パンチョスという偉大なグループの生い立ちからレキント・ギターの採用で盛名を得るまでとそのメンバーの交替、このグループに触発されたようにメキシコやニューヨークなどで生まれた数多くのトリオ、そして世代間の断層と明日に向かってのトリオ音楽の動向など、歴史的な写真を多く載せ、詳細に語っている。

巻末にカリブのラテントリオのCD、人名索引、ドゥオ(二重唱)、トリオ、楽団などの演奏グループ索引、レーベル(レコード会社)名索引、曲名索引など、107頁にわたる詳細な資料が付いていて、トリオ音楽についてすべてを網羅したといってもいい労作。

〔桜井 敏浩〕