『ブラジル人の就職に役立つ会話集』 田所 清克・伊藤 奈希砂、ペドロ・アイレス - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ブラジル人の就職に役立つ会話集』 田所 清克・伊藤 奈希砂、ペドロ・アイレス


現在国際金融危機から世界同時不況が発生し、日本でもとくに自動車など輸出関連の製造業などが大きな打撃を受け、多くの企業・工場が操業短縮による在庫・生産調整を行っている中で、コスト削減のための雇用調整まで行っている事例は少なくない。その場合、真っ先に削減されるのが非正規雇用である派遣労働者であり、多くは日系ブラジル人等のいわゆる“デカセギ”である。

失業した彼らに対して、ブラジルで募集して就職を斡旋した派遣業者も、これまで有用な低廉労働力として使ってきた企業も直接雇用ではないとして、その再就職の世話には冷淡である。日本で数年働いてきたとはいえ、多くは主に機械的な作業を担当してきたこれらブラジル人の多くは日本語も十分ではなく、ハローワークや行政機関に行っても思うように意思の疎通を図れないことが、厳しい雇用情勢のなかで一段と再就職を難しくしている。

本書は、こういったブラジル人がハローワークに行って仕事を探す、相談員とやり取りをして仕事の内容や条件を確認する、実際の雇用企業へ赴き面接を受ける、履歴書や求職申込書を作ってみるなどの、最も基本的な行動を取る際の、最小限必要な会話と資料のポルトガル語・日本語の対訳集である。ブラジル人がこれを用いて会話し、あるいは該当する文を指さしすれば、葡語の分からない日本人もまた葡語発音の振り仮名により会話し、指さしすることで意思の疎通が出来るように工夫されている。

この本の執筆・出版の動機は、現場レベルで具体的に困窮の極みにある在日ブラジル人を支援したいという温かい思いにある。ブラジル人の窮状に対する多くの言葉による同情や提言よりも、いま必要なのは現実の問題打開のためにすぐ実際に役立つツールの提供である。本書が在日ブラジル人はじめ彼らと接触する行政の担当者の座右に置かれて威力を発揮することが望まれる。

(国際語学社2009年4月125頁1200円+税)