『「帝国アメリカ」に近すぎた国々 ラテンアメリカと日本』 石井 陽一 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『「帝国アメリカ」に近すぎた国々 ラテンアメリカと日本』  石井 陽一


メキシコの独裁者であったポルフィリオ・ディアスの言葉に「哀れメキシコよ、米国にあまりに近く、天国からあまりにも遠い」から題名を取った本書は、長くラテンアメリカ地域論としての研究を続けてきた著者が、最近のラテンアメリカの情勢を分かりやすく解説したものである。

国際金融危機は人災であると弾じる序章から始まって、1970年代から80年代にかけて先行的に取り入れたチリとメキシコと90年代のワシントン・コンセンサスにより各国が受容した新自由主義経済の経緯と結果を解説し、21世紀に入っての新自由主義への反旗としてのベネズエラのチャベス、ボリビアのモラレス、エクアドルのコレア、ニカラグアのオルテガなどの反米中道左派政権を紹介している。次いでラテンアメリカの安全保障を規定しているリオ条約(米州相互援助条約)と日米安保条約を比較し、これらの状況を踏まえた日本の対ラテンアメリカ政策のシナリオと、ラテンアメリカから示唆される日本のODA、農林業改革、安全保障についての提言を試みている。

(扶桑社(新書)2009年6月206頁720円+税)