ブラジル植民地史・ポルトガル近世史の研究を続けてきた著者(東京外語大名誉教授)による植民地期から近代を経て現代に至るまでの通史。第一部「植民地期」では、1500年のポルトガル人カブラルのブラジル到達以前の先住民社会からポルトガル人等の入植と総督制や奴隷の導入、砂糖プランテーションの拡大、内陸での金鉱の発見などによる植民地化の進展を、第二部「近代」では1822 年のペドロ王太子の独立宣言から第一、第二帝政、旧共和制を通じてコーヒー産業が勃興しブルジュアジーが力を得ていく過程を、第三部「現代」は、1930 年から45 年まで続いたヴァルガス独裁政治、第二次世界大戦終結時から1964 年の間の左右ポピュリズム政治、64 年のクーデタから85 年の民政移管までの軍事政権による開発独裁、85 年の民主主義の復活からカルドーゾ、ルーラ政権に至る現在までを、分かりやすく概説している。
大学での教科書を意図して執筆されたもので、政治のみならず、経済、社会、文化面についてもふれることで歴史全体を概観し、現代の問題点の背景が理解できるようになっている。
(東洋書店 2009年7月 304頁 2800円+税)
『ラテンアメリカ時報』2009年秋号(No.1388)より