シリーズ「失われた10 年」を超えて—ラテン・アメリカの教訓3部作の『ラテン・アメリカは警告する』(2005 年)に続く第2冊目。新自由主義経済の負の経験を乗り越えようとするラテンアメリカに、2008 年米国発のサブプライム・ローン破綻に端を発する経済危機が襲い、分断・対立・競争を原理とする「競争」による混沌とした不安社会から脱却するために、安心社会に向けて連帯・参加・協同を原理とする「共生」への模索が始まっている。
第?部の新自由主義以後の参加的・連帯的社会形成、社会関係資本への注目、福祉社会の可能性と貧困政策についての理論編と、第?部のペルーでの住民参加、メキシコのエンパワーメント、ブラジルのNGO による教育実践、エクアドルの多民族共生、ブラジル南部クリチバ市が行った人間生活中心の都市計画、アルゼンチンの地域通貨、日本への移民労働者の貢献という実践編から構成されている。ラテンアメリカでの多様な社会の課題とそれらへの挑戦の試みは、現代日本への示唆が込められているという編者、執筆者の意気込みが感じられる。
(新評論 2009年7月 315頁 2600円+税)
『ラテンアメリカ時報』2009年秋号(No.1388)より