スペイン語表題 “ALBUM DE LOS 110 ANOS DE LA INMIGRACION JAPOESA AL PERU”
1899年4月3日に日本から最初の南米集団移民785人を乗せた佐倉丸がカヤオに入港してから昨年で110周年を迎えた。初めての日本人移民が到着し、サトウキビ等の農園で労働に就いた後に過酷な条件に耐えかねて都市に移り、一部は“ペルー下り”といわれたアンデスの東側のボリビア、ブラジルからアルゼンチンにまで移動した「草分けの時代」、着の身着のままで入り込んだ都市部で持ち前の勤勉さから商業やサービス業などによって徐々に生活基盤を構築していったものの、第二次世界大戦前後の日本人移民排斥と敵国人としての迫害を受けて多くの資産と日系社会のリーダーを失った「日本の戦争」の時代を経て、戦後少しずつ立ち直り、日系人としての生活を守り、社会的にも再進出するようになった「古き良き日系」、やがて日本との経済、文化、人的交流などの関係が緊密化し、移民の子であるフジモリが大統領に当選するなど、日系も6世、7世までが誕生、二重の文化遺産を継承する「新しい時代」に入っている。しかし、一方では母国日本への「出稼ぎ」とその「停住」が増加し、日本社会の中に生活基盤を築く日系人も出てきた。
本書は、これらペルー日系人の110年の歴史を証言する600点以上の写真から構成されており、これから父祖の時代よりももっと複雑な環境で生きていく日系子孫にもペルー日系人の歴史を知って欲しいという意図から、すべての説明が日本語とスペイン語でなされている。時間の経過とともに散逸しつつある貴重な移住史料を集成した労作であるが、それと同時に日本とペルーで生きた移住者たちの歴史とともに夢や希望を感じさせる見応えのある写真集である。
(現代史料出版2009年8月207頁2200円+税)