『アマゾン 民族・征服・環境の歴史』 ジョン・ヘミング 国本伊代・国本和孝訳 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『アマゾン 民族・征服・環境の歴史』 ジョン・ヘミング 国本伊代・国本和孝訳


アマゾン河口に1500年スペイン人が黄金郷を求めて到達し、以来宣教師が入り、ヨーロッパ人植民者による先住民奴隷狩り、彼らの抵抗、豊富な生物資源を探索する博物学者の活動、自動車の普及に拠るゴム・ブームの到来とゴム採取人の悲惨な生活、ブラジルのロンドニア州の語源になったロンドン大佐をはじめとする多くの探険家が入り込み、これまで存在しなかったと思われていた初期先住民文化の考古学上の発見の歴史を概説している。さらに近代以降、開発によって広範囲に生じた環境破壊問題、世界最大の水系であるアマゾンならではの多様な生物資源の存在を指摘し、いまアマゾンで何が起きているかを、著者(カナダ生まれ英国で活躍する歴史家)の長年のアマゾンでのフィールドワークによって得た知見により明らかにしている。

1970年代から本格化した大型重機など文明の利器を使った大規模な自然破壊は、世界的にも知られるようになってきたが、その背景には500年に及ぶ強欲な侵入者による自

然へ冒涜や先住民の犠牲の歴史があったことを知ることができる。

(東洋書林 2010年5月 519頁 6500円+税)

『ラテンアメリカ時報』2010年夏号(No.1391)より