石油に次ぐ巨大市場を形成する一次産品であり、世界経済がグローバル化した現在、生産を担う開発途上国と主な輸出先で大量に消費する先進国との南北問題の様々な事象を象徴するのがコーヒーである。アフリカで自生していたコーヒーが飲み物用として栽培されるようになった歴史から始まり、輸出農産品としてのコーヒーの特色、生産様式により大きく変わる品質や市場価値、収穫・精製・焙煎という三つの重要な要素などをはじめに解説している。ついで、コスタリカ、ブラジル、コロンビアを主に、グアテマラ、エルサルバドル、さらにベトナムなどで大きくなったコーヒー産業がラテンアメリカの近代化にどのような影響を及ぼしてきたかを明らかにしている。そしてコーヒー消費国の諸相を、世界最大の国民的飲み物とした大消費国米国、そして一大消費国である日本での歴史と缶コーヒーの発明など独自のコーヒー文化を、ラテンアメリカ近現代史専門家が世界視点から整理したものである。
世界的にもっとも一般的な嗜好飲み物であるコーヒーの世界史的意義と現状を知るうえで基本的な知識を提供してくれる。
(ミネルヴァ書房 2010年2月 332頁 3000円+税)
『ラテンアメリカ時報』2010年夏号(No.1391)より