ウルグアイに生まれ、アルゼンチンのブエノスアイレスと最北東部ミシオネス州を往復した生活を送り、父、義父、親友、妻など周囲の人たちの事故死や自殺など不幸な死に何度も直面し、自らも自ら命を絶った作家オラシオ・キロガ(1878〜93年)による短編集。
ミシオネス州の密林地帯に拓かれた牧場、農場や木材伐採に従事する労働者と雇用主やジャングルのトラや蛇、オウムなどの動物が主人公だが、いずれも死、恐怖、病的心理を探求しており、いずれも密林の中での宿命の操り人形のようである。長く過酷な自然の中で生活してきた開拓者が些細なミスで命を落とす話、人前で伐採場主から平手打ちを喰った月雇い人夫の執拗な復讐譚などのほか、「子供のための密林の物語」として書かれたオウムの復讐を描いた動物の物語、蛇の生態に通じていた知識がふんだんに盛り込まれた中編「アナコンダ」など、14編はこれまでのラテンアメリカ文学とひと味違った世界を楽しめる。
(野々山真輝帆訳彩流社2010年7月226頁2500円+税)