北海道遠軽の老舗豆専門店を引き継いだ著者が、海外の在来豆の郷土料理を知るために世界66か国の豆を食う人々を約10年にわたって訪れた記録の集大成。中南米編ではまずインゲン豆の保有数が世界最大の研究機関である国際熱帯農業センター(CIAT)のあるコロンビア(チャチャフルッタ料理等)から始め、窒素を固定し土地を肥やす豆(フジホール等)と豆の蔓の支柱となるトーモロコシ、歯が日よけとなるカボチャを組み合わせて植える伝統農法ミルバのあるメキシコ、豆煮込み料理フェイジョアーダ等豆食大国のブラジル、アンデスの大豆「タルウィ」のあるペルー、先住民グアラニー族の通過儀礼に豆を使うパラグアイ、豆の食べ方を聞いたインカやスペイン征服者に抵抗した先住民マプーチェ族のいるチリ、農家が沢山の豆の種を継ぐハイパーインフレ下の2015年のベネズエラ、代表的な豆ご版があるキューバ、肉食の国で豆はほとんど食べないといわれながら地方では豆がよく食べられているアルゼンチン、食用のタルウィと豆を使ったゲームもあるエクアドル、環境保護先進国で農業技術研究所(INTA)が多種のいんげん豆を保存しているコスタリカ、コミュニティで70種の豆を保存してコーヒーの代わりに煎って使っているホンジュラスの12か国がそれぞれの国で生産・流通している豆とその料理とともに紹介されている。
生産農家、植物研究者、料理をする人たちとの交流も生き生きと語られ、豆に憑かれた著者の熱意が伝わってくる。
〔桜井 敏浩〕
(農文協 2021年12月 272頁 2,200円+税 ISBN978-4-540-21107-2 )