連載レポート１１１：桜井悌司「数字に見るラテンアメリカ・カリブ諸国への 家族送金動向」

連載レポート１１１

数字に見るラテンアメリカ・カリブ諸国への家族送金動向

執筆者：桜井悌司（ラテンアメリカ協会常務理事）

米国のラテンアメリカ関連のシンクタンクであるIAD(Inter American Dialogue)は、2023年4月8日のニュースレターで「数字に見る2022年の家族送金」（Family Remittances 2022 in Numbers）というパワーポイントプレゼンテーションを掲載した。興味のある統計情報が多数含まれているので数字に基づき簡単に紹介する。

全世界からラテンアメリカ諸国への家族送金額及び送金者数は表1の通りである。2022年の全世界からラテンアメリカ諸国への予定送金総額は、150,671,109,347ドル（約19兆5，872億円、1ドル＝130円で計算）に達した。前年比14％増である。ラテンアメリカの送金者総数は27,452,205人となっている。

表１　２０２１年～２２年の送金額と送金者数

表1に基づき、送金総額、2022年送金額の伸び率、送金者総数を国別にランク付けしたものが、表２である。送金総額では、メキシコ、グアテマラ、ドミニカ共和国、コロンビアエルサルバドルの６ヶ国がほぼ８０億ドルを超えている。ここ２年で送金額の伸び率が高い国はニカラグアとグアテマラである。送金者総数では、メキシコからエクアドルに至る９か国が100万人を超えている。

表２　送金予定額、送金額伸率、送金者総数のラテンアメリカ国別ランキング

次に送金額の各国のGDPの比率を表３に基づき見てみよう。2022年の対GDP比率を1990年時点の比率と比較するとパナマを除きすべての国で上昇していることがわかる。コロナ以前の2019年と比較しても、ガイアナとハイチは下回り、パナマとウルグアイは変化がないがその他の国々はすべて上昇している。

2022年の数字で対GDPの10％を上回っている国は、ホンジュラス（28.8%）、エルサルバドル（26.7%）、ジャマイカ（25.6%）、ニカラグア（22.2%）、グアテマラ（20.0%）、ハイチ（15.9%）、ドミニカ共（10.3%）と7ヶ国に達している。

表３　送金額のGDPに占める割合

次に表4と表5に基づき、米国からの送金の実情をみてみよう。IADによると米国からの送金のフローは、世界全体からの送金の80％を占めている。2019年には、75％であったので増加傾向にあることが理解できる。また米国からの22年の送金者総数は、19,040,517人で、対前年比100万人近く増加している。

世界全体に占める米国からの送金者数の比率は表４のとおりであるが、メキシコ、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラスの4ヶ国が88％を上回っている。

2022年における新規の米国からの送金者総数は約90万人に達するが、対前年比一挙に3倍以上の伸びを示した国は、コロンビア、ブラジル、ベネズエラ、ホンジュラス、ペルーの5ヶ国である。

表４　２０２１年、２２年の米国からの送金者数のシェア

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表５　新規移住者による米国からの送金（２０２１年、２２年）

続いて、表６は2001年から5年毎の送金額の増加率を示している。これによると2015年から2022年までの8年間でみると、ラテンアメリカの24ヶ国の平均では、11％の伸びで、国別で最も大きく伸びている国は、グアテマラの16％、以下ニカラグアの14％、ホンジュラスとメキシコの13％、コロンビアの11％、ドミニカ共和国とエクアドルの10％と続く。

表６　５年毎の送金額の増加率と移住者の人口に占める割合

最後に、送金者全体に占めるデジタル方式による送金者を2020年と2022年の比較は表7の通りである。今後ともデジタル方式による送金は増加するものとみられる。

表７　デジタル送金者の送金者総数に占める割合

以　　　上