【演題】コロンビアの政治経済情勢の現状と見通し
【講師】高杉 優弘氏 駐コロンビア共和国特命全権大使
【日時】2023年5月11日(木)10:00~11:30am(日本時間)
【場所】オンライン
【参加者】114名
高杉大使は、昨年成立したコロンビア初の左派政権とされるペトロ政権の社会・経済・外交政策について資料を用いて詳しく説明された(資料は協会ホームページに掲載)。ペトロ大統領は、取り残されてきたと感じている多くの低所得者層や「変化」を求める若者らの高い期待を担い、非合法武装集団との交渉・対話による全面和平の取組をはじめ、医療制度改革、労働制度改革、農地改革、麻薬政策の転換(禁止からコントロールへ)、脱炭素化等の改革をドラスティックに進めようとしている。しかし、ペトロ大統領は、何としてでも改革を推進しようとの強い決意の下、最近の閣僚等の大幅交代や司法府との対立、主要政党との連立解消をはじめ、政権の改革案に異を唱える勢力との対決姿勢を努めており、大統領支持率が低下している中、先行きは不透明さを増している。
外交政策では、ベネズエラとはこれまでの方針を覆して国交を回復したが、米国とは、麻薬対策等をめぐる見解の相違はあるも、良好な関係を維持。中国との関係は、ボゴタ市地下鉄建設をはじめ、実利中心。近年の中国の対コロンビア投資は著しく増加しているが、欧米と比べるとまだプレゼンスは低い。ウクライナ問題ではロシア非難の立場を維持しているが、従来の西側の立場から少しグローバルサウス寄りの傾向が見られる。ペトロ政権の日本への関心は高いとは言えず、貿易自由化よりも産業保護・振興を重視する立場から、10年来のEPA交渉も大きな進展は見られていない。
講演後の質疑では、ペトロ政権のアジア・太平洋地域へのアプローチ、EPAの可能性、ベネズエラとの関係の今後、日本とコロンビアの経済界の両国関係に対する期待のギャップ、太平洋岸の開発、医療改革、ペトロ大統領の政治スタイルに対する懸念、等の質問が出され、丁寧にお答えいただいた。