【演題】JICA中南米2所長帰国講演会
ドミニカ共和国―これまでとこれから
ハイチ共和国―ハイチにおける協力の概要
【講師】近藤 貴之氏 ドミニカ共和国 事務所長
野田 久尚氏 ハイチ支所 支所長
【日時】5月24日 10:00~11:30(日本時間)
【場所】リモート
【参加者】72名
イスパニョーラ島の東3分の2を占めるドミニカ共和国と西3分の1を占めるハイチ共和国。隣接する対照的な二つの国について、両講師から多くの写真を含む資料(協会ホームページに掲載)を用いてお話いただいた。
ドミニカ共和国
年間約700万人の観光客(ビーチリゾート)を集める。最近は平均5~6%の経済成長率を遂げており、一人当たり所得は8,000ドル超になった。但し人口の半分はその半分に満たない状況。約200万人の海外在住者。2018年に台湾と国交断絶し、中国と国交樹立。
JICAの協力:技術協力(研修員累計約2,400人、青年海外協力隊等約1,000人)、無償協力(医療関連施設)、有償資金協力(農業開発、コロナ対策)。ドミニカ共和国の成長に伴い、協力分野は医療・保険、農業→基礎教育・貿易振興→観光、中小企業支援、廃棄物処理へと変遷。コロナ禍は1年を待たずに終息。
トルヒージョ独裁政権下の移民導入策で日本移民受入れ(3年で1,300人余、地域的に分散)。今後、二世以後の世代に日本語等をどのように継承してゆくかが課題。
ハイチ共和国
1970年頃まで。ハイチとドミニカ共和国はほぼ同程度の経済水準であったが、最近の一人当たりGDPはドミニカ共和国がハイチの約5倍という差に至っている。理由は政治的混迷、治安の悪化等。2018年から4年間はマイナス成長。2010年の大地震でGDPの約2倍に上る被害を受けたのを機に日本の協力が強化された。協力の重点分野は、保健・衛生、教育、農業、防災・環境保全。2021年にギャングの抗争が激化し、モイーズ大統領が暗殺されたことで治安が悪化、JICAのハイチ事業は縮小から中止に至り、職員は退避している状況にある。今後の協力としては、第三国での技術移転、現地人スタッフを通しての案件形成、が考えられる。なお、事態収拾のため、2022年12月21日に「包摂的な政権移行と透明性のある選挙に関する国民的コンセンサス」を発表、本年中の選挙実施などが謳われているが、実現には相当の時間がかかるものと思われる。
講演後の質疑では、ハイチからドミニカ共和国への日系移民の流入、ハイチのフランスからの独立が早すぎた(?)、ハイチのODA受入れ機関の情況、両所長の両国での業務経験を今後にどのように活かしていくか、ハイチに対する多国籍部隊の派遣要請、ハイチからドミニカ共和国への移民/ギャングの流入、等についての質問が出され、両所長・支所長から丁寧なお答えをいただいた。
<会員限定:資料>JICA中南米2所長帰国講演会 近藤 貴之 ドミニカ共和国事務所長/野田 久尚 ハイチ支所長