ジャズ・ミュージシャンの撮影から始まり、アフリカに渡って以来、特に西アフリカのヨルバ族系の文化や宗教に興味をもち、アフリカ、南米、カリブなどの環大西洋を何度も訪れている写真家のキューバ紀行のエッセイと解説、街角でのスナップ写真集。
「路地裏から見た街ガイド」では、首都ハバナから始まりサンティアゴ・デ・クーバ、トリニダッ、ビニャーレス渓谷を案内し、「神々と太鼓と音楽」では、キューバ音楽で最も重要なソンとルンバを中心に、ヨルバの宗教に根ざしたサンテリーア(ブラジルのカンドンブレと同系)から、その人々の日常生活への浸透、詩、音楽や絵画などに至るまでを見せてくれる。「逆風を追い風にしたトップランナー」は一転して、社会主義体制と米国による経済封鎖下での医療、教育制度、有機農業面でのキューバの充実した仕組みと工夫を紹介している。最後に現代キューバを代表する「ふたりの英雄 カストロとゲバラ」で、カストロの生い立ち、革命史とそのメッセージ、ゲバラの生涯を綴っている。
さすがに音楽やダンス、そしてそのアフリカの文化、宗教ルーツに詳しい写真家ならではの、キューバに惚れ込んだ紀行と楽しませてくれる数々の美しい写真集である。
(新潮社(とんぼの本)2011年3月135頁1500円+税)