執筆者:五味 茂(「花咲爺の会」会長代行)
イペーはブラジル各地に自生するノウゼンカズラ科の樹木で、黄色、白、ピンク、紫色などのきれいな花を咲かせ、そのうち黄色の花はブラジルの国花です。日本からブラジルへ移住した人々の「このイペーを故郷で咲かせてほしい」という願いを叶えたいのです。また、ブラジルから日本へ移住した人々に見て喜んでいただきたいのです。
会の歴史は、 3人の創始者・1962年に日本からブラジルへ移住した和田好司さん(移住者ブログ『私たちの50年』管理者)、鹿児島大学名誉教授有隅健一先生(鑑賞植物の育種の研究のため南米で数年滞在された)、そして鹿児島県霧島市の農園主で造園施工管理技師の前田久紀さんの献身的な努力によって開始されました。それぞれのイペー日本での栽培に関心を持ち研究を続けていましたが、2010年会合して、日本でのイペーの育種や普及について協力しあうことを約束し、「ブラジルの花を日本で育てる会」として活動を始めることになりました。
実は3名より前にイペーを日本へ植樹する努力をしていた方がいます。藤川真弘師です。苦難の心を心として仏門に入り、日本の海外開拓移民第一号の北米ハワイ島と姉妹都市、東京都大島町の富士山の見える地を霊地と定め「富士見観音堂」を建立しました。その時、“ご供養に ブラジル国花 イッペーの 種送りこし 移民もありき”と歌いイペーを1980年10月、同師が、五輪塔前に植樹(右下)しました。
それ以来数回にわたり植樹をしましたが、花は咲きませんでした。2010年5月歌手の中平マリコさんが、和田さんを通じて前田さんから苗木4本を受け取り、マリコさんの島の友人に送り植樹式を行いました。しかし私が2016年6月に、富士見観音堂3代目伊藤修真堂主と訪問しました時には1本だけ残っていましたが、生長は望めませんでした。
当初イペーの日本での栽培は、耐寒性の不足のためなかなか成果を挙げられなかったのですが、ブラジル高地のクリチーバ市在住の池田久成さん他の方々から優れた種子が送られて来るようになりました。東京都農林総合研究センターをはじめ数か所でイペーの苗を育てくださり、府中市神代植物公園、東京都駒場オリンピック公園など各地へ配布できるようになりました。それまでにすでに日本では、浜松以西の神戸・九州各地・沖縄などではイペーは咲いていましたが、わが会は、これまでは困難とされていた関東地方以北へのイペーの移植に挑戦することになりました。
そして、2015年和田代表責任者の提唱で「花咲爺の会」を結成することになり、会長に以前から縁の下的な協力者であった東京都在住の井川實さんを指名して活動を開始しました。この結果、会員や協力者が拡大し、メーリングリストだけで、日本とブラジル合わせますと300人以上になりました。この頃、私は、JICAシニアボランティアでボリビアのコチャバンバに滞在しており、和田夫妻が移住船あるぜんちな丸同船者を訪ねる旅で、標高2600mのイペーの種を採取してもらいました。日本海外学生移住連盟OB会でも、和田さんと懇意にさせて頂いていたので、協力者会員として帰国後苗木を頂き、日当たりの良い塀のそばで育て始めました。
関東以北での試験栽培の可能性が出てきました。群馬県立大泉高校での苗の生育状況が順調で同町での地植え準備を始めたこと、イペーに関心を持った常総市から苗木提供の依頼があったことなどから、イペーの地植えを開始していました千葉県一宮町で、第1回イペーサミットが2016年10月8日開催されることになりました。イペーサミットとは「イペーを日本で育て、咲かせよう」と願い、日本とブラジルで活動中の「花咲爺の会」会員およびその協力者が一堂に会し、各地での試験栽培の結果報告や、耐寒性など課題克服に向けて話し合う会議です。 あるぜんちな丸同船者の稲見正治郎幹事長経営のヴィラ一宮での食事会では、ブラジルを中心に歌手活動をされている中平マリコさんの”イペー音頭“の熱唱で、皆が踊りだし、お祭り騒ぎとなり皆様の親睦を、深める事ができました。富士見観音堂のイペーの様子を前田さんに相談すると、”いろいろと壁はあるが時期を見計らって協力し、富士見観音に絶対にイペーを育てたい。“との返事をくれました。
横浜市鶴見区役所では、ブラジル出身の日系人が多く住んでおり在日ブラジル総領事が協力して、「花咲爺の会」にイペーの苗木の要望があり、3本区役所前に植樹しました。その後、群馬県太田市の鈴木信弥さんが、仙台市の洞林寺境内にイペーの苗木を植樹しに行くなど、活動が活発化してきました。第2回イペーサミットは2017年4月22日に群馬県大泉町で開催することになり、これまでの試験栽培の成果や課題を整理し、会員同士が情報を共有すると同時に、これから本格的なイペーの試験栽培を始める大泉町や常総市の関係者に、イペーや栽培方法についての知識を深めてもらうのが目的になりました。
今回は初めて「イペーの理解と育成方法」の主要テーマでの基調講演が盛り込まれました。有隅健一鹿児島大名誉教授が「イペーの育種と問題点」、造園施工管理技士でイペーの試験栽培を数多く手掛けてきた前田久紀さんが「多種試験栽培~日本全国展開に向けて~」についてそれぞれ話しました。大泉町の会議場や大泉高校交流訪問・懇親会の手配など鈴木信弥幹事長が実施し、とどこうりなく終わりました。
2019年4月20日に我が家(東京都大田区)のイペーが初めて開花しました。2013年12月に種をまき、2016年6月に植樹したものです。二房でしたが華麗に咲き、これからが楽しみになりました。その後連休明けに、井川会長と稲見さんと私3人で立川にイペーを引き取りに伺い、白子へ行きイペー10本を仮移植してから一宮へ移動してみると、なんと!以前植えたイペーが開花していたのです! これが千葉開花イペー第一号でした。
茨城県常総市のイペーは、「2020年5月8日に咲きました」と市役所で働く在日日系ブラジル人の女性が写真を中平マリコさんに送ってくれました。マリコさんは植樹祭にも参加して、「町の皆様は私と一緒に『イペー音頭』を歌い踊ってくださり、ブラジルと日本がイペーを通じて強い絆で結ばれたように感じました」というお便りを下さいました。
群馬県太田市の鈴木信弥さんからも、開花の情報がありましたが、仙台市の洞林寺吉田住職から「北限のイペーやっと咲きました」と2020年5月16日「花咲爺の会」に投稿された時には関係者の皆様の喜びはたえませんでした。地元の新聞2紙にも掲載され、お寺の檀家の方々もサンパウロ州スザノ市金剛寺のブラジル富士見観音の話を聞いていましたので、イペー開花は待ちに待った嬉しい便りでした。
2020年7月20日に念願の大島富士見観音堂に“イペーの花を咲かせよう”の植樹4本を船で伊藤修真堂主と運び、無事に地植えが出来ました。大泉イペーサミットの時に前田さんが大島の風雪等に耐えられる物を必ず送るからと言っていましたが、故人になってしまいました。そこで、前田さんが、都農林総合研究センターに送り、育成して頂いたイペー苗木を植樹出来たので、ようやく肩の荷がおりましたが、咲く迄はしっかりと見守りたいと思います。
神戸移住センターの出石美知子さんのご紹介によって、我々にとって初めての北国挑戦が始まりました。5月稲見さんと私が立川の東京都農林総合研究センターを訪ね、イペーの生育状況の確認と越前市向けイペーの選定を行い、イペー2本の梱包と発送手続きをお願いし、快諾を得ました。さらに福井県越前市の牧師河野カルロスさんの「運賃着払い」のOKも頂きました。越前市へのイペー移植が2021年6月20日無事完了したと井川實会長から連絡がありました。
2022年5月14日に、「ブラジルsolidario横浜」(日伯友好連携支援団体)の今年度の総会が横浜市技能文化会館にて開かれることになりましたので、議題に横浜市での植樹について入れてもらいました。斎藤達也ブラジルsolidario横浜理事長と役員の方々と協議を重ね、活動目標を策定しました。
1)斎藤氏および役員の横浜市の自宅等で、東京都に育ててもらった6年物のイペー10本を移植して、サントス市から贈与を受けるイペーとして育てる。
2)早ければ来年、『サントス・横浜友好115年』記念植樹を実行。場合によってはその後の花博とか120周年に実行することも考えられる。
ブラジルsolidario横浜の会員FBで、イペー植樹希望者を呼びかけたところ、友人の林隆春氏を私に直接紹介され、連絡を取りました。林氏の意向は、介護施設を45棟あまり経営しており、愛知県、岐阜県、三重県、千葉県、埼玉県等、気候がマッチすればどこでも良く、関東方面に出張も多いので、車で苗を頂きに上がります、とのこと。今回は10本関東地方の介護施設でまず育成してもらい、今後はブラジル日系人が働く介護施設で、順次植樹したいとのこと。楽しみにしております。
2022年5月21日3年ぶりで、井川・稲見と私の3者会議を篠崎駅前(井川邸近く)で昼食会を兼ねて開催し、今後の活動について話し合う事ができました。井川会長と東京都農林総合研究センター緑化森林科長の打ち合わせの結果、6月23日に、立川のセンターにブラジルsolidario分10本と介護施設分10本のイペー苗木をそれぞれ車で引き取りに行くことになりました。オリジナルBLOGは、掲載日: 18/07/2022 [詳細はこちら] をクリックしてください。
2022年7月23日にブラジルSolidário横浜の最大行事:Viva114のシンポジウムでは、「コロナ禍での多文化共生活動と今後の展望」というテーマ
で、ブラジルから基調講演:細川多美子氏(サンパウロ人文科学研究所)が、最近の現地情報をイペーの花を背景に語ってくれました。大島富士見観音堂伊藤堂守からアマゾンでの経験を基に多文化共生活動について具体的に斉藤理事長をまじえて語り盛り上がりました。イペーの花を咲かす活動も紹介させていただき、 (講演者の方々)細川氏に賛同の言葉をもらいました。横浜大桟橋の入り口では、現在、歩行者はイペーの木を敷き詰めた板材を歩き大桟橋から乗船するようになっています。
2022年8月11日、“ブラジルSolidário横浜”の臨時総会が、Zoom併用で開かれ、私もZoom参加しました。主な議事は順調に進み、観音堂在住の大黒堂ミロさんから大島富士見観音堂が宗教法人になるブラジル日報新聞の紹介がありました。さらに大黒堂さんからは、2020年7月に植樹したイペーが順調に育っていますので、来春は咲くと思いますとの報告がありました。オリジナルBLOGはhttps://ameblo.jp/yoshijiwanchan/entry-12762019386.html
「ILOVE 大泉 ふるさと作り」を今年日系人の方々が始めました、ブラジルへ戻れなくともふるさとを感じる環境づくりを目的とするための運動です。その一環としてブラジルのシンボルであるイペーを植えることで故郷を思い出し、安心して生活できるようにしたいので是非応援していただきたいという依頼が、責任者の橋本秀吉さんから2022年7月頃、私あてに連絡がきました。早速、井川会長に相談しますと、今回は、日系ブラジル人の方々へ20本のイペーを進呈し、育ててもらいことにしました。そして来年は、その延長として、大泉町が20本の街路樹を植える計画をしていましたが、台風と雨季など考慮し、移植時期を決めることにしました。立川の都農林研究センターの緑化森林科科長と相談して、日系人の方々が育成する20本のイペーは、9月30日に引取りとし、翌日の1日(土)にブラジリアン・プラザで、“大泉ふるさと作りイペー植樹”等に関する会議が開催されることになりました。私も橋本さんに同行する事になりました。ブラジリアン・プラザに着くと、大島富士見観音伊藤堂主のイペーと桜の花の壁画が堂々と描かれていました。私も5年ぶりの大泉訪問でもあり、感無量でした。そして正面玄関のロビーにイペーを搬入しました。
また、井川会長に群馬県立大泉高校グリーンサイエンス科の定村先生とのアポイントを取ってもらっていましたので、イペーの大泉町への移植に関して同先生と相談しました。これから20本のイペーを日系ブラジル人の方々に育成してもらい、来年の「イペー並木計画」の実現へ向けて、これからの厳しい冬をうまく超えさせることができるよう見守って頂きたいとお願いしました。また、イペーの木を案内させてもらうと、校舎の南側に大きくなり過ぎ、手入れした木と生徒の通用門の近くの堂々した木に咲いたとのことで、大泉町での(写真右鈴木信弥氏)第2回日伯イペーサミットの成果が出始めました。
翌日の1日(土)ブラジリアン・プラザで行われた“大泉ふるさと作りイペー植樹”等に関する会議に、第2回日伯イペーサミットの実行委員長の鈴木信弥さんが、イペー植樹指導顧問として参加することになりました。OUIZUMIブラジリアンセンターは、日系ブラジル人が“大泉ふるさと作り”を推進していく為に有効活用しようと設立された組織で、現在、図書館と日本定住資料館、会議室、観光案内などの施設があります。まず、“ILOVE 大泉 ふるさと作り”実行責任者の橋本秀吉さん司会のもとに会議が始まり、日本海外協会理事長林隆春さんが大泉ブラジリアンセンターのこれから運営とイペー植樹推進計画とその他の課題について討議を進めました。12時前にイペー植樹指導顧問の鈴木信弥さんから、大泉でのイペー植樹に関する講話があり、盛況理に終了しました。
群馬県大泉町でイペーが咲いたのは、イペーサミットの実行委員長鈴木信弥さんの自宅と県立大泉高校の庭の2本です。一昨年開花した鈴木邸の木は見事な花ですが、他の4本は現在まで咲いていません。上州からっ風などの環境でイペーを育成するノウハウの勉強に6人で伺いました。鈴木さんは、日当たりなど植樹場所についてもやさしくアドバイスしてくださいました。勉強会に参加した人を含めて、16日に20人に立川の都農林研究センターから運びこんだ20本のイペー苗木をOIZUMIふるさとづくりがブラジリアンプラサで配布する事になりました。その様子を見に、鈴木さんが行ってくれ、ポスターと共に無事に配布された事の報告を確認メールでくださいました。これによって日系ブラジル人の方々が、イペーを育て、ブラジル国花を咲かせて、大泉町をOIZUMIふるさととして、生活していただける環境づくりの一助になればと思っています。
2022年11月28日にソリダリオの斎藤逹也市議が、サントス市と横浜市国際局とのZoomによる初会合を企画しましたので、私も参加しました。最初の挨拶を 斉藤市議会議員そして、横浜参加者による自己紹介: 横浜市国際局国際政策部担当部長、 横浜市国際局国際政策部国際連携課欧州米州担当課長、 NPOソリダリオ顧問小林正博さん ・NPOソリダリオ理事石黒マリア春代さん・山口宏美さん・大黒堂ミロさん・NPOソリダリオ・伊藤修さん、私と続きました。サントス川の参加者、ミヤシロ パウロさん・サントス市議会議員、クワグリアット パウラさん、サントス市役所国際局、ナカイ サダオさん、・サントス市日本人会会長/エストレーラ・デ・オウロクラブ会長、ヒロセ マリーゼさん、元サントス市日本人会会長、サントス市日本人会委員等の自己紹介が行われました。
交流イベント開催に関する意見交換では、イペーの記念植樹から始まり、ソリダリオ顧問小林さんとサントス市日本人会会長ナカイさんなどが意見を述べ、これから話し合いをして進めることになりました。私は自己紹介で花咲爺の会として、イペーの植樹の活動を紹介させて頂きました。
移民115周年記念を2023年6月18日に実施する方向で、多数の関係者の皆様の協力により、これから実際に具体化するためのスタートとなりました。これも、在アルゼンチンの異文化コミュニケーターの相川知子さんが、協力的に声をかけてくれたのがきっかけとなったと思います。この場を借りて感謝申し上げます。
今年の活動は、介護施設等を経営している林隆春さん、ソリダリオ顧問小林正博さん、「ILOVE 大泉 ふるさと作り」責任者の橋本秀吉さんに、立川の都農林研究センターのために、計42本のイペーの苗木を受け取りました。いずれのところも、来年の植樹計画が目的なので、無事に育て花を咲かせることを期待しています。
大島富士見観音堂のイペーは、植樹して3年目の初開花あるかなと期待していましたが、順調に育っていますので、来年に期待する(私の自宅のイペー)思いです。東京都大島町の姉妹都市ハワイ島を3月下旬に訪れました。島のガイドさんから開拓移民の歴史を島の様子を語りながらの話に思いをはせました。ハワイではイペーが咲き乱れていますので紹介させて頂きますが、気候も日本とは違うとはいえ羨ましいです。大島はじめ各地での開花を楽しみにしておりますので、今後とも花咲爺の会を見守ってください、よろしくお願いいたします。
「花咲爺の会」は、全国的な活動をしており、九州地方では設立以前から、イペーを咲かせている久留米の倉八鈴子さんが、多くの情報を投稿し、活動されています。関西地方では、設立当初からの協力者の杉井皓一さんをはじめ多くの仲間たちで、会合・食事会や行事なども催し、楽しみながら活動しています。今回は、関東以北の寒い地方でイペーを咲かせる活動している会員・協力している方々の様子をお伝えしました。最後に、私たち「花咲爺の会」
の活動を初めから今日まで無償で支援し、イペーの苗を育てて供給を続けて下さった『公益社団法人 東京都農林水産振興財団』の皆様に心より深く御礼申し上げます。
「花咲爺の会」会長代行 五味 茂(文責)