『現代メキシコを知るための60章』 国本 伊代編著 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『現代メキシコを知るための60章』 国本 伊代編著


ラテンアメリカ・ヒスパニック関係だけでも本書が18冊目になるエリア・スタディーズ・シリーズの最新作。本書が企画・執筆を始めた2010年は独立運動勃発200周年、現代メキシコの基盤を作った革命勃発から100周年という、近代国家建設が開始された節目であたる。そこでまず、21世紀初頭の現代メキシコを姿の紹介から始めて、PRI(制度的革命党)の71 年間の統治後の現在の多党政治時代、石油等資源大国でありながら天国と地獄を行き来し、また新自由主義に流され農地改革の放棄といわれる経済運営、グローバル化で変わるビジネス環境、国際政治の中で独自性を発揮しているメキシコ外交、隣接する豊かな「北の国」への越境者の問題、環境汚染と巨大都市化の縮図としてのメキシコ市、変貌するメキシコ社会、考古学、伝統文化、観光、テレビ大衆文化など多岐で魅惑的な文化を紹介し、最後に日本とメキシコ交流の近代史、企業進出、交換留学制度、教育・学術交流などから21世紀の日本・メキシコ関係についても言及している。

それぞれの分野の専門家9名による、バランスの取れた紹介書であり、現代メキシコを知るうえできわめて有用な一冊である。

(明石書店 2011年7月 300頁 2000円+税)

『ラテンアメリカ時報』2011年夏号(No.1395)より