メキシコ革命の内戦で荒廃した1902年にメキシコ市で生まれ、2002年に没した、メキシコだけというよりラテンアメリカを代表する写真家の写真集。
あらゆる物、事象、人物に興味をもち、街角のスナップ、建築物やその部分、ごく普通の庶民や労働者からディエゴ・リベラやフリーダ・カーロ、トロツキーといった著名人のポートレート、静物、ヌード写真など、実に多彩な被写体にカメラを向けている。前衛芸術的なものとメキシコの風土や民族性が覗える表現が混じり合い、副題のとおりメキシコの幻想を感じさせる全作品はモノクロ写真だけだが、光と色彩を感じさせる。詳細な年表、参考文献リストも付いて、充実したアルバレス・ブラボの世界の集大成となっている。
(岩波書店2011年5月335頁7000円+税)