執筆者:硯田一弘(アディルザス代表取締役)
日本では記録的な雨量を伴う台風2号が通過したようですが、パラグアイは今週は好天が続いています。しかし、一旦大雨が降ると大変なのが道路の冠水です。
アスンシオンでは雨水排水溝(desagüe pluvial)の整備率が26%とのことで、昨年まで住んでいたVilla Morra地区でも、テレビ局の脇の道路が冠水して自動車が流されて被害者が発生するということが2019年にありました。これは当時の現場の様子です。
また、幹線道路であるEspaña通りやMariscal Lopez通りでも、小型車のタイヤが半分水没するようなエリアが数カ所あって、大雨の際の外出は注意が必要になります。
このニュースでは、市長が冠水対策として雨水排水溝の整備率を現在の二倍以上の56%に引き上げるとの方針を打ち出したとしています。
自然災害の規模は世界的に激しさを増しているように感じますが、遅ればせながらパラグアイでもインフラの整備が着々と進められていて、少しづつでも不便が解消されていくのはありがたい事です。
ところで、以前在パラグアイ日本商工会議所事務局で活動をサポートしてくれていた長野浩太郎君がLa Nacion紙に取り上げられました。
彼は大学を卒業後日系企業で勤務していたのですが、現在はSNS活動に従事しており、パラグアイを愛する日本人として大きく取り上げられました。
また先月はスペイン語を流暢に操る渡辺裕友君が言葉を身につけるキッカケとなったパラグアイを再訪し、新しい紹介ビデオを投稿しています。
https://www.youtube.com/shorts/LxRDPxwtdAQ
南米の中でも知名度の低いパラグアイですが、こうした若い仲間が積極的に色々な角度で日本や世界とパラグアイを結び付ける工夫をしています。
見習わなければ!
先週パラグアイの洪水とその対策について書きましたが、今週はエクアソルで深刻な洪水が発生したと報じられました。
一旦大雨が降ると、排水機構が整備されていないのは、ブラジルのサンパウロも同様であり、給水から排水に至るまで、水の扱いに長けた日本の技術導入が各国で待たれるところです。
ところで、今週初めにはパラグアイでの5月のインフレ率が0%であったことが報じられましたが、これをアルゼンチンのメディアが取り上げて、隣国同士なのに信じられない!という感嘆の辛口コメントを発しています。
中南米と言えば悪い治安と高いインフレ率、働かない労働者という固定観念をお持ちの人が多いと思いますが、インフレを低く抑えられるパラグアイでは、中央銀行の独立性が保たれており、80年間同じ通貨を使い続けているという点でも常時インフレの隣国から視ると驚異的な事象であるように受け止められているようです。
先週はパラグアイでスペイン語による日本文化をSNSで紹介する若者の記事が掲載されましたが、今週はパラグアイでも最も古い日本食レストラン、1970年開業のSUKIYAKIが紹介されました。
このレストランはホテル内山田という日系ホテルの中にあって、伝統に基いた日本食が提供されることで旧市街地区で高い支持を得ており、在パラグアイ日本商工会議所も月次の定例会はここで開催されています。
パラグアイにお運びの際は、是非パラグアイの日本食もお試しください。
SUMIYAKIの人気メニューの一つがオーナー内山田氏の出身地である長崎の名物、チャンポンですが、ここにはピリ辛チャンポンやピリ辛サラダという地元では見られない一味加えた定番料理がおススメとなっています。
南米ではチャンポンというのは辛いタンメンという定義になっているようで、人気の韓国レストランや台湾系中華食堂でもチャンポンを頼むと辛い麺が出てきます。
https://marisolio.com/recipes/champon-spicy-seafood-noodle-soup/
恐らく韓国や台湾で、チャンポンが辛い海鮮ラーメンというイメージが出来上がったようです。(写真はトリップアドバイザーでパラグアイでの一番人気のレストランSuの名物Champong)
ピリ辛と言えば、今月23日金曜日の午前10時から、駐パラグアイ日本大使館の中谷大使によるオンライン講演会「小粒でもピリリと辛いパラグアイ」が日本ラテンアメリカ協会で開催されます。https://latin-america.jp/archives/58244
パラグアイの新しい伝統食ピリ辛シリーズのように、古くて新しい温故知新且つホットな情報が提供される筈。皆様是非ご参加ください。
昨日のニュースによりますと、最低賃金決定評議会が来週火曜日に招集され、現在のGs.2,550,307(本日の為替レートGs.7243で換算するとUS$352≒5万円)からGs.130,000(5.1%)上がって約2,680,000(US$370≒52千円)になるだろうとのこと。
https://www.adndigital.com.py/conasam-definira-sobre-reajuste-del-salario-minimo-el-proximo-martes/
パラグアイの最低賃金に関するWiki情報によりますと、パラグアイの最低賃金は南米域内ではウルグアイ(US$556)・チリ(US$555)・エクアドル(US%450)に次いで4番目に高いようで、ブラジル(US$274)やアルゼンチン(US$340)・ペルー(US$284)・コロンビア(US$280)等の大国と比べても就労者の満足度は極めて高いように感じられます。
この表で悲しいのは、ベネズエラがUS$4.9で陥没していることですが、アルゼンチンのA$87,987という数字は、公定レートで算定したもので、青レートと言われる市中レートで換算すると半分のUS$170程度になって、ベネズエラほどではないにしても、南米域内では最低の部類に入ることが見て取れます。
ただ、別のニュースではパラグアイの総人口740万人のうち170万人以上が非正規雇用で国が定めた最低賃金を受け取っていないので、満足度の高さはそれほどでもない、との分析もされています。
とは言っても、いつも書いていることですが、パラグアイの幸福度は現金収入だけでは測れない部分が多くあり、飢餓を訴える国民はほぼ皆無で、深刻な食糧不足に苦しむカリブ周辺諸国とは大きな乖離がありますし、ホームレスが路上でゴロゴロしているブラジルのサンパウロ市街地のような不安さを感じさせる要素もありません。
一方で今日のabc color紙電子版では、首都圏の墓地での盗難や不法滞在が増加していると報じていますが、筆者は昨年12月までRecoreta墓地のすぐ近くに住んでいたものの、あまり不安を感じるレベルの治安の悪さは感じていませんでした。
今日のLa Nacion紙の別の紙面では、大統領府を背景にして食事を楽しめるカフェバーが人気を博している、という記事も掲載されています。
大統領府とこの距離感で食事が出来る場所が存在する国は他にあるでしょうか?
ところで日本では熱中症に注意、というニュースが報じられるようになってきましたが、冬を迎えたパラグアイでは保健相が寒さ対策として火鉢(Brasero)をシッカリ使う様に、というお触れを出したようです。https://www.ultimahora.com/salud-insta-a-usar-correctamente-el-brasero-en-dias-de-frio
拙宅でも、ペルー駐在時以来しまい込んでいたガスストーブを出して、ガス屋さんに10ℓのボンベを配達してもらって11年ぶりにストーブを焚く生活をはじめました。まだまだ寒さは続くようなので、火鉢の導入も検討します。
パラナ河の河川交通を廻って、利害関係のあるアルゼンチン・ウルグアイ・ブラジル・パラグアイ・ボリビアの5カ国協議が紛糾しています。
‷Peaje hidrovía: Argentina no cede y afectados pedirán intervención de Comité Intergubernamental”(水路通行料:アルゼンチンは譲歩せず、当事各国は政府間協議の介入を要求)
下の地図でご覧の通り、内陸国パラグアイやボリビアだけでなく、パラグアイ川パラナ川の流域に物流拠点を持つブラジルやウルグアイも、アルゼンチンが今年から導入した浚渫資金捻出の為の河川通行料問題に関して大きな不満を訴えています。
関係各国は複数回にわたって協議を行ってきたモノの、今日に至るまでアルゼンチン側からの譲歩を引き出せない状況です。
確かにここ数年の旱魃時期の河川水位低下によって貨物の積載量が大幅に制限されて各国は大きな運送料の上昇を強いられてきました。下流域での流域接地距離が長いアルゼンチンは、この負担を補うために今年1月からアルゼンチンを通過する船舶への通過料を課していて、これが国際問題に発展している訳です。通過料はコンテナ1本に対して20ドルから40ドル程度と、大きな金額ではないものの、この支払や検閲にかかる手数を考慮すると、船舶管理会社や荷主の負担は小さくないとして、周辺諸国はこの通過料の制度撤回を求めています。
今週末はまたブラジルのクリチバに来ています。今回は飛行機で来たのですが、通常であれば陸路を走って来られる距離であり、途中に10ヵ所ほどの料金所があります。実はこの料金所が、この二年ほど契約更改手続きの遅れで機能しておらず、無料で有料道路を走れる状態になっています。利用者にとっては嬉しい手続きの遅れですが、よりインパクトの大きい水運の分野で今まで無かった課金が突然行われるというのは、コロナ禍やウクライナ戦争で諸経費が上昇している中にあって好ましくない出費の増加となっているのです。
この問題はアルゼンチン政府にとって何らかの譲歩案を受け入れる条件が提示されない限り、まだ暫く揉め続けると思われます。
ウクライナの戦況はロシアの内紛という予想外の展開によって新たな混乱を生じていますが、いずれの問題も誰かが何らかの譲歩を受け入れることで早期に収拾されることを望みます。
以 上