執筆者:北村 孝(元海外移住事業団、国際協力事業団勤務)
「性善説と性悪説」
ウイキペディア検索によると、「性善説」とは「人の本性は善であり、不善とは欲に覆われるためだ」とする古代中国戦国時代紀元前3世紀ごろの儒学者・思想家「孟子」の説であり「性悪説」はほぼ同時代の中国の哲学者・思想家「荀子」が、孟子の性善説に反対して唱えた人間の本性に対する主張で、「人は本来弱い存在であり、環境によってどのようにも変化するので礼儀作法や社会規範を学ぶことが大切だ、その結果立派な人間になれる」即ち「努力することにより善を獲得できる」という説である。
孟子の性善説と荀子の性悪説は相反するものではなく、どちらも努力の積み重ねにより善を獲得、あるいは開花させ立派な人間になることが出来るというものである。しかし、一般的にはビジネス目線で「性悪説」とは「相手を悪人だとして疑って接する態度」、
一方「性善説」とは「相手を善人だとして信用して接する態度」を意味する。私は外国暮らしを始めるまでは性善説・性悪説ということを考えたことはなかった。本稿では後者の一般的用法による性悪説の国及び性善説の国についてその対比を考えてみたい。
私が大学卒業後暮らした国はドミニカ共和国6年、ブラジル 19 年、アメリカ2年、トルコ4年、アルゼンチン2年、そして日本は完全リタイアを含め 34 年である。世界には 190数ヵ国存在するが、私が住んだことがある国は上記の6ヵ国に過ぎないので、世界の中で最も典型的な性悪説の国または性善説の国がどこなのかは知らないが、本稿では性悪説の国として外国では最も長く暮らしたブラジル、性善説の国として我が母国日本の例について述べてみたい。
「独断偏見的私見」
ブラジルの支配的な白人の大多数はポルトガル・イタリア・スペイン系であり南欧的気質が強く、そのほかアフリカ、中東(アラブ、ユダヤ)、西欧、北欧、東欧、(日本を含め)アジアの世界各国から導入された人種の坩堝であり、人種・宗教・習慣・価値観・人間観等が全く異なる所で育った人達の集合社会であり、総合的な基準としては性悪説を取らざるを得ない環境であったと考えられる。それが長年の生活体験に基づく社会の知恵であり、コンセンサスになったものと思う。
一方、日本は島国であり、有史以来ほぼ単一民族として構成され、しかも江戸時代200余年に亘る鎖国により外国人の流入が阻止され、日本民族としての単一性が一段と進化し、同様な習慣・価値観・人間観を共有し、「正直・勤勉は当然」、「話せば判る」、「阿吽の呼吸で」というような性善説の典型とも言うべき人々が多く、おそらく多数のブラジル人とは正反対の感覚なのであろう。
概してブラジル人は、明るく、親切で、お喋りで、人懐っこく、友人になりやすい。そして接触が度重なると親密感や信頼感も急速に深まってくる。しかし、金銭や高額な物が絡んでくると突如豹変することがママある。性善説を信じ切っている日本人は、そのような事態になると吃驚仰天したり、ブラジル人不信に陥ったりすることになるが、多少なりとも性悪説の心構えがあれば、(日本でも「貸した金は呉れたと思え」というコトバがあるくらいであり)「日本人でもそのような人はいる」と然程驚かずに済むであろうし、ブラジルの煩雑な手続きにも納得できるであろう。
諸手続きの煩雑さを含めブラジルには嫌な点も多い。しかしブラジルにはそのような欠点を補って余りある良さもある。ブラジル到着早々に“嫌なこと”に衝撃的に遭遇した人は「ブラジル嫌い」になる。ある程度の期間ブラジルで過ごし、ブラジルの「良さ悪さ」を天秤にかけて測れるようになれば、「ブラジルが気に入った」と思う人が多くなってくるようである。
そして日本にも「ブラキチ」(ブラジル気狂い、ブラジル大好き人間)が結構いる。ブラジルの諸手続きは非常に面倒であるが、デスパシャンテ(手続き代行人)の活用による利便さもあり、また当初面倒だと思う手続きも慣れれば苦にならなくなるものである。以下思いつくままに幾つかの具体的な例を述べてみたい。なお関連し若干現地事情(1967~2014年間に見聞したこと)を付加した。
(1)身分証明書
ブラジルの身分証明書は法務省連邦警察局が発行するものであり、ブラジル人用はRG(Registro Geral 一般登録)、外国人用はRNE(Registro Nacional Estrangeiro外国人登録)という。
外国人身分証明書(cedula de identidade de estrangeiro)には RNE(番号)、 区分(永住/一時滞在)、
有効期限、姓名、父母の姓名、国籍、出生地(国)、生年月日、性別、入国入国年月日、顔写真、サイン、親指の指紋、担当責任者のサインがある。「父母の姓名」は生死に関わらず記載され、日本的感覚では奇異に感じるが、本人のフルネームでは
同姓同名もあり、更に明確化するためのものである。 なお、日本では「姓―名」順であるが、ブラジルでは欧米諸国同様「名―姓」の順である。
「姓名」はフルネームを記載するが、日本では姓は一つ、名も一つであるが、 ブラジルでは 姓は通常複数である。姓の順序は母親の姓が先で父親の姓が後という順(スペイン語圏とは反対)になる。
正確には母親の父方の姓と父親の父方の姓を使う。シングルマザーの場合は母親の父方の姓のみとなる。
結婚した夫婦は、夫の姓は不変であるが、妻は夫の姓(父方の姓)を最後に付けるが スペイン語圏のような「de(・・・の意)」は使わない。
名は一つの者もいるが複数が一般的で二つが多い。日系ブラジル人の場合ブラジル風の名と日本風な名を付ける者が多い。
なお、近年は民法改正により 結婚しても夫の姓を名乗らなくてもよくなったので結婚後夫の姓を使用しない女性が増えてきている由。 特に社会的に高度な活動をしている女性は独身時代に培ってきた業績や知名度が
結婚により姓が変わることにより別人と思われることや、姓の変更に伴う面倒な諸手続を避けたいという意識が生じるようである。
また、逆に名家に嫁ぐ女性には好んで夫の姓を使うことがあるらしい。
日本の国籍法では血統主義であるので「出生地(国)」はあまり問題にならないが、ブラジルでは「出生地主義」であるため 「ブラジル生まれ」であれば「ブラジル出入国」や「ブラジル滞在中」はブラジル人としての手続きが必要になり、「出生国」が本人識別の一要素になる。
身分証明書を取得するためには、まず連邦警察の担当事務所に出頭し指紋の採取を行わねばならない
(注)ブラジルでは外交旅券や公用旅券で入国し、長期滞在する場合には、外務省に登録し、外務省から特別身分証明書が発給され、指紋採取は行われない。
私が 1967 年、1977 年と 2003 年ブラジル入国の際には手の指全てに黒い墨を塗って指紋採取が行われたが、事後一生懸命洗っても黒い墨がなかなか落ちなかった記憶がある。
また指紋採取技術が遅れていたのか、女性の中には明瞭な指紋採取が出来ず「洗剤を使う
作業はせずに2週間後にやり直し」と言い渡される者が少なくなかった。
ブラジルの場合、犯罪の有無に関わらずブラジル人及び外国人全員(観光など短期滞在者を除く)が指紋登録を行い、それにより各人を確実・安全・安定的に識別し得るシステムを採用している。そして上記の如き項目を記載した身分証明書、まさに性悪説の国の身分証明書が使用されている。
また、ブラジルでは身分証明書は常に携行していなければならず、特に国内旅行(航空機や長距離バス等の利用)、銀行口座開設、多額の買い物等にも不可欠のものである。
性善説の国日本では政府発行の身分証明書の必要がなかったと言える。
旅券(外務省発行)や運転免許証(都道府県公安委員会発行)は写真も添付されている公的機関発行の身分証明書ではあるが、全ての日本人が所持しているものではなく、また本来別目的のためのものであり、しかも有効期間が限定されている。そのため全日本人を識別する手段にはならない。
従って国民皆保険のため全住民に支給されている医療被保険者証(氏名、被保険者番号、住所、生年月日、性別、一部負担金の割合、有効期限、保険者名等記載)が写真や指紋が添付されていないが身分証明書として通用している。
2016 年1月発足したマイナンバー(個人番号)制度は「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に基づき住民が申請した場合に発行されるプラスチック製の IC
カードであり、法律に基づき市区町村長が発行する身分証明書である。しかし、マイナンバーカード(氏名・住所・生年月日・性別・個人番号・顔写真・有効期限記載)の取得は強制的なものではなく、個人の申請によるものであり、必ずしも全員が所持しているわけではない(2022
年8月末時点で取得者は 47.4%とのこと)。
その後(ブラジルでは信じ難いことであるが)マイナンバーカードの取得とその有効活用の進捗を図るため最大 20,000 円のマイナポイントを取得できることになった。 その効果もあり、2023 年2月末時点で交付率は 63.5%になった由。
日本では「指紋採取」というと、即「犯罪者」を想定するのか猛烈な拒絶反応を示す人が多い。
在日外国人に対する指紋採取についても「人道的」、「人権的」見地と称し反対運動を行っている日本人もいる。ブラジルに住んでいると想像を絶する現象であり、日本は犯罪者ほぼ皆無の太平国家と信じ切っているとさえ思われる。日本人の指紋(採取)登録は原則として犯罪者に限定されており、無犯罪者の場合本人識別を確実・安定的に可能にすることが困難な場合が生じる。
(注)日本人が外国に渡航するに当たり永住査証等を取得するような場合、当該国から無犯罪証明書の提出を求められることがある。その場合東京都警視庁(または道府県警察本部)鑑識課に出向き、左右の手全部の指紋採取が行われ、登録されている犯罪者の指紋に合致するか否かをチェックし、
無犯罪(または有犯罪)証明書が発給される。
法医学では、近年 DNA
鑑定法が飛躍的に発展、普及しているが、究極の本人識別に指紋が使用され、その重要性は今後とも続くであろう。日本の探偵小説やサスペンス映画では、刑事や探偵が容疑者の指紋採取に苦労する場面が登場するが、ブラジルではその必要性は全くなく、そんな場面が登場すればブラジル人ならばナンセンスなことと思うであろう。
法歯学では、真っ黒焦げ死体の識別には歯型による方法(遺族が掛り付けの歯科医から本人の歯型資料を入手し、提供する)が最有力だった由。
(2)印鑑とサイン
日本の印鑑押印については、一般的には性善説によりどんな印鑑でも良いが、流石に非常に重要な文書についての押印については市区町村に登録された実印を使い、印鑑証明書を添付するのは性悪説に起因するものとも言えよう。
ブラジルでは印鑑の使用習慣はなく、サイン(署名)であり、各人のサインはcartório(公証役場)ならば自宅や事務所の近くなどどこででも何カ所でもよく、身分証明書(旅券でも可)を呈示し登録できる。文書にサインの場合は、サイン登録のある公証役場にその文書を提出しそのサインが登録されているサインと同一のものであることを証明する公証役場のサインを貰う必要がある。
日本では印鑑証明を必要とするとする文書押印は非常に少ないが、ブラジルでは公証役場のサイン証明を必要とする文書は数多あり、文書にサインすれば、まず公証役場へというのが常識とさえ言える。
そして日本では、契約書には文書最終ページに当事者が自署し押印し、そして全てのページについては2通の契約書を少しずらし重ね合わせ、当事者が最終ページに押印した同じ印鑑により、割印することにより両者の各ページの同一性を認めたことにしている。
イニシアル(initial)とは欧文やローマ字で書くときの、文章・固有名詞・姓名などの最初の文字のこと。イニシアル・サインとは一般的には欧文の姓名の頭文字を崩し、本人特有の真似され難いデザインとし、正式サインの略号として使うことである。
ブラジルでは通常、契約書最終ページの末尾に関係者全員(貸主・借主・保証人及び場合により不動産会社の証人)の公証役場に登録のある正式サイン及び同ページ以外の全てのページの右端余白欄に関係者全員のイニシアル・サインを記入し、それぞれのページ記入文は真正なものであることを各人が認知した証としている。
なお、欧文の姓名の頭文字ではなく、漢字の姓又は名の一文字を崩した形状とし、略号化しイニシアル・サインとすることもあり得る。いずれにせよ、イニシアル・サインは公証役場に登録することなく、本人が常時使用し、関係の他者もそれを認めているものである。
(3)コピー
ブラジルには、文書のコピーにはコピア・シンプレス copia simples(単純コピー)とコピア・アウテンティカーダ copia
autenticada(認証されたコピー)がある。前者は(コンビニや自宅の印刷機で作成する)単純なゼロックス・コピーのことであり、日本ではそれが原本に真正なコピーか否かを詮索することなく、(通常)正当なコピーとして通用している。
しかし、ブラジルでは諸手続きに使用するコピーとしては、公証役場に原本を提出し、そこでコピーを作成し、そのコピーは原本と同一であることを公証役場が証明するサインのあるコピー、すなわち「認証されたコピー」が必要となる。認証付コピーであれば真正なコピーであることを誰でも認めてくれるほか、文書原本の代替品として通用することもある。ただし、航空機利用の際提示する身分証明書や旅券、車運転の際携行すべき運転免許証等は原本でなければならない。
(注)2014年ブラジルから帰国するに際し、引越荷物を船便で送付するためブラジル税関に提出する書類として旅券のコピーの提出を求められた。その時の旅券は 50
ページあり、何らか記載のあるページのみのコピーでよいのかと思ったら、白紙を含め全ページ分が必要だと言う。 当時公証役場でのコピー作成料金(枚数による)がいくらだったか確な記憶はないが、(日本円換算で)3
千円ぐらいだったと思う。単純コピーであれば3百円も掛からないであろう。
(4)総会の開催
社団法人など非営利団体は夫々の定款に従い役員の改選、事業計画/予算案、事業報告/決算書の承認等重要事項を決定する時には、総会を開く。その場合総会成立の要件として出席者数が定数を満たすか否かが問題となる。団体によっては定数を満たす出席者数を得ることが困難な場合も多い。
ブラジルでは非営利団体の総会開催通知(会員に対する通知状や新聞広告欄での公示)には、当然のことながら開催日時、場所、議題等が明示されるが、開催時刻として第一次招集と第二次招集とが明記されていることが多い。即ち、総会の開催日時には第一次招集時刻のほか、第二次招集時刻がその1時間後または2時間後であることを明記している。
第一次招集時刻に定数(過半数)の出席者が集まる場合には問題ないが、定数に満たない場合もあり、救済措置がなければ、いつまで経っても総会が成立しないことになり得る。従って定款において、総会の開催について第一次招集において出席者が定数に満たない場合にはその後(1時間後または2時間後に)第二次招集を行い、出席者数如何に拘わらず総会が成立することを規定している団体が多い。そのことにより、総会の成立及び総会における決定事項の正当性を立証されるとしている。
しかし、第二次招集という便利なシステムにより、少数者により何でも簡単に決定出来ることから思わぬ障害も生じているということを含め民法の改正(2002年1月10
日公布、1年後施行)があり、団体の特殊事項(法人の定款変更及び役員の解任)決定の特別(臨時)総会については第一次招集においては全会員の過半数、第二次招集においては
1/3以上の会員が出席する総会において出席者の2/3以上の同意を得る場合のみ議決することが出来ることとなった。
(注)社団法人 PL
ゴルフクラブ(サンパウロ郊外にある日系ゴルフクラブ)では定款改正の特別総会の開催にあたり、出席者が定数に満たないことを想定し(多数の会員が自主的に正規委任状を作成し提出することを期待することは至難なので)委任状作成手続きを行った。
多数の会員がゴルフを楽しむために参集する土曜と日曜の2日間公証人に同クラブに出張して貰い多数の会員の正式委任状を作成した。
しかし、日本では公益法人、ゴルフクラブ、アパート(マンション)管理組合、県人会、学校の同窓会等での定款や会則では総会に関する規定はあっても、総会成立の要件については明記せず、無条件で成立することが暗黙の了解となっているのであろうか。
(5)根拠法令
ブラジルでは種々の制度的行為について「根拠法令を明示」していることが多い。しかし、日本では単に「法律により」という表現で十分であり、場合によっては「当局の指示により」という文言だけで納得して規制に従うということが常識となっている。随分昔の時代から施政者(幕府や藩主など)、
昭和の時代になってからでも太平洋戦争時代の日本政府、その後進駐軍統治時代が続き「お上の意向には逆らえないという意識」が一段と浸透し、行政指導や窓口指導にも文句なしに従わざるを得ないという雰囲気が性善説的思考に加えられたのではなかろうか。
ブラジルには「当局の指示により」という張り紙は見当たらないし、「法律により」ということについては必ず当該法令の日付と番号を明示する習慣となっている。人間観や風習の異なる多民族の集合体であり、また「性悪説」が基礎であるブラジルでは曖昧な表現では納得しないのであろう。
ブラジルの憲法(1988年10月5日公布)第 5 条(個人の権利と義務)第2項においては「何人といえども法律によらない限り、何らかの行為をなすこと、またはなさないことを一切干渉、強制されない」という規定があるほどである。この思想は 1891年憲法以降一貫して流れている。そのためか、ブラジルでは規制の根拠である法令を細部にわたり明確にしており、法律に抵触しなければ自由に行動し得るという制度になっている。(なお、法令に明記されていることであっても、必ずしもその通り実行されないこともあるというのがブラジルの特質でもある。)
次に幾つかの例を記す。
エレベーター内または乗降口の掲示
本建物のエレベーター利用にあたり人種・性・皮膚の色・出自・社会的身分・年齢・身体障害・非伝染性病気により差別することは禁止され、その違反については罰金が科せられる。
1996 年 10 月4日付法律第 11,995 号、政令 36,434 号
銀行・郵便局・病院の窓口での掲示
妊婦・乳幼児を連れた者・高齢者・障害者証所持者は優先的に取り扱われる。
1992 年 10 月1日付市条例第 11,248 号
バス内優先座席横面窓ガラスの掲示
この部分の座席は妊婦・乳幼児を連れた者・高齢者・障害者証所持者のために留保されているものである。該当者不在の場合は自由席となる。
1985 年 12 月 13 日付市条例第 10,012 号
銀行窓口への通路にある回転ドア(上部にある表示)
1983 年 6 月 30 日付連邦法第 7,102 号
市営青果市場の壁面の掲示
この施設においてはシャツを着ていない人の入場を禁ず。また動物の入場を禁ず。 1995年市条例第 3,836 号
(6)銀行口座開設
個人の銀行口座開設には政府発行の(顔写真・指紋・サインつき)身分証明書、納税者登録票、住所を証明し得る公共料金等の fatura(請求書兼領収書)の提示及び2名の参照人の申告が必要である。
永住者や長期滞在者であっても身分証明書を取得するまでの期間は銀行口座開設が出来ない。
(注1)住所を証明し得る書類として、日本では居住地の市区町村長が発給する住民票があるが、ブラジルにはそのような制度はない。そのための書類として電話・電気・ガス等公共料金の fatura(請求書兼領収書)を求められる。
しかし、殆どの一時滞在者は借家住まいであり、それらの fatura は貸主の名義であるのが普通で、その場合借家の賃貸借契約書のコピーを提示することになる。
(注2)参照人とは銀行からの照会に対し、本人について説明し、推薦し得るひとのこと。その氏名、勤務先(職業)、連絡先等について申告する必要がある。
(注3)納税者登録について、ブラジルに居住する全ての成人(外務省に登録される外国人を除く)は財務省国庫局に登録し、登録票を取得することが必要である。所得がなく無課税の者でも登録票を取得する。
納税者登録票には登録番号、姓名、生年月日、発行年月が記載される。 自然人のみならず法人も全て納税者登録を行い、登録番号を持つ。納税者登録について自然人の場合CPF(Cadastro Pessoa Fisica)、法人の場合 CNPJ(Cadastro Nacional Pessoa Juridica)という。
日本では個人情報云々で国民総背番号制には強い反対があるが、ブラジルでは随分前からこの制度が導入されている。銀行口座開設のみならず運転免許証取得、所得税申告、電話加入やテレビ局視聴申込、不動産売買、車や冷蔵庫の購入(少額の買物には不要)、 商品購入のための電話発注や分割払いには身分証明書番号とともに納税者番号は不可欠である。それらがなければ、ブラジルでの生活は極端に窮屈というか、重大な支障が生じる。登録番号取得前は知友に頼み、知友の名前で対処して貰うことになる。
(注4)既述の外国人登録/身分証明書や納税者登録の申請手続きを行うと、protocoプロトコーロという申請受理書を交付される。外国人登録/身分証明書のプロトコーロは申請後約1ヵ月余で交付され、縦3.5cm、横約 20cm の細長い紙片で姓名・生年月日・両親の姓名・国籍・性別・申請分類・受理官庁名と番号・旅券番号・申請年月日・本人のサインと写真・担当官のサインがある。なお、交付予定と有効期間の欄には 180 日と記入されているので申請後180日以内には身分証明書が発給され、それまでの期間は身分証明書として使えることになる。 なお、前記の銀行口座開設に関してはこのプロトコーロでも可能である。正式な身分証明書を連邦警察局から受理する場合にはこのプロトコーロ原本を提出しなければならない。納税者登録票のプロトコーロは申請後2週間余で 入手出来、登録番号が明記されているので、正式な登録票交付前でも一応役に立つ。
個人のみならず団体等の法人の場合も法人登録による番号取得と納税者番号の取得が不可欠であり、架空名義や任意団体では銀行口座開設や不動産取得は不可能である。
ブラジルの預金口座で一般的なものは当座預金、ポウパンサ(貯蓄性預金)と定期預金である。当座預金は無利息、小切手使用可、諸料金の自動振替可、他者との送受金可で日常生活上有用であるが口座維持料を毎月徴収される。ポウパンサは日本の普通預金にやや似ており、利息有、口座維持料無であるが、小切手使用不可、諸料金の自動振替不可で生活遂行上不便である。
日本では夫婦財産共有性ではないため、銀行では夫婦共同名義の口座を開設出来ない。ブラジルでは余程の資産家や特殊事情がある場合を除き、結婚に際し夫婦財産共有制にすることが一般的である。従って銀行口座開設にあたり、夫婦連名名義の口座を開設し、小切手も夫婦連名のものを使用することが多い。
(注1)ブラジル(やアメリカ)では夫婦連名名義の銀行口座を開設できるが、日本の海外駐在員の場合、日本での癖がでて夫単独名義の口座を開設する人が少なくない。
1977 年私がリオデジャネイロに住んでいた時、某駐在員が突然事故死し、妻名義の口座がないため事故処理や生活費等のために周囲の友人に金策を依頼せざるを得なかった由。
(注2)私がサンパウロ事務所勤務の時(1988 年)日本での技術研修を終え戻ってきたブラジル人は「学校では、小切手は発展途上国では通用しないと教わったが、先進国でも小切手が通用しない国があることを知った。」と言う。
(注3)当時の(高インフレ下の)ブラジルでは、カードは決済に多期間を要するため、即時決済可能な小切手が多用されていた。なお、横線小切手(通常、小切手左斜め上に2本の平行線を引く)が必須であった。これは、支払い金融機関が取立てを依頼した金融機関または支払い金融機関と取引のある者にしか支払えない仕組みであり、不正な小切手所持人に支払うことを防ぐためのものである。
(7)料金の支払い
日本では中小の販売店、スーパーマーケット、病院等では顧客(や店員)は皆善人で誤魔化すことはないと信じている。しかし、ブラジルでは顧客(や店員)の全員が必ずしも善人ばかりとは限らず、また善人であっても料金を支払えないこともあるので不正な行為や料金の支払い不能を防止する方策を講じている。
① 中小の販売店
家族経営の零細店舗では不必要であるが、中小の店舗では
スーパーマーケットといってもレジが 20カ所ぐらい並ぶ大型スーパーについて、日本にもそのようなスーパーがあるが、商品を手にしてもレジを通らずに自由に店舗内を通り抜けることができる仕組みになっている。そして、日本では誰もが商品を手にしたら必ずレジを通り代金を支払うと信じこんでいる。しかし、ブラジルでは次のような防止策を講じているところが多い。
日本では多額の場合に(のみ)身分証明書を求めることがある。また、カードについては本人のものか否かを確かめずに使用可能とすることが少なくない。(日本人の店員の場合日本人成人の名前であれば男女の区別は通常容易に判るはずであるが、異性のカードでも容易に受け取ることがある。)
日本では所要料金は「後払い」が普通である。
国民皆保険であるため、保険適用の病院・クリニック・検査所・薬局・鍼灸整骨院では、患者側は1~3割負担、病院等側は7~9割は保険でカバーするため、患者側が不払いとなっても被害額は比較的少ない。しかも患者側は1~3割と比較的低料金であるため支払い不能となることが少なくなる。
性善説に加え、そのような背景もあるためか支払いは「後払い」が普通である。
(注)ある外国人が高額な手術を行ったが不払いのまま帰国してしまい料金回収不能になっているとの話を聞いたことがある。
ブラジルには統一医療保険システム(SUS)と呼ばれる公的医療保険制度があり、希望すれば誰でも容易に加入出来る。加入者は薬代を除き全て無料(特定の薬は無料)である。
しかし、利用できる医療施設が極限され、待機期間(時間)が甚大という劣悪な実状から、実際には民間の医療保険が必要不可欠になっている。
従って、種々様々な医療保険会社が存在するが、それぞれの会社の保険が適用し得る病院や検査所は限定されている。
大凡、超一流・一流・優秀・優良等の病院グループに分類され、保険の種類により利用し得る病院や検査所が定められており、保険料金もそれにより格差がある。超一流や一流病院対応の保険には並みの家庭では保険料の支払いが至難である。
しかも保険料金は年齢により異なり、高齢化が進むほどに高くなる。
(医療費は統計上 30 歳を1とすると 60 歳はその2倍、70歳はその4倍になるとのことで高齢者の保険料が高くなるのは当然のことであり、日本でも外資系の医療保険会社の年齢別保険料金表をみれば納得できるであろう。)
保険に加入すると保険会社に毎月料金を支払うが前払いである。保険未加入者が病院に飛び込みで診察を受ける場合は勿論診察料や検査料は前払いである。
ブラジルには医療保険会社の対象外のクリニックも多々あるが、懇意の医者の場合を除き通常料金前払いである。
(注1)救急車で保険未加入の病院に飛び込んだが手持ち資金が少なく、廊下に放置され家族に至急電話し、必要な資金を持ってきて貰ったということを聞いたことがある。
(注2)海外駐在員や海外出張者が多数いる企業や役所の場合、派遣元が海外勤務期間中の医療について面倒をみる制度(無制限ではなく種々の制約はあるが)がある。しかし、海外駐在員や出張者が少ない会社では、日本出発前に日本の保険会社の海外旅行保険を掛けてくるようであり、それが得策である。
(8)出欠の確認
サンパウロに住んでいた時のこと、2005 年9月運転免許証更新制度の変更が行われた。
新制度では州交通局公認の運転者養成センター(CFCs)が実施する理論講習会のテストを受けねばならないことになった。
実際テスト受験のためには ①CFCs にて3日間 15 時間の講習を受ける、②インターネットによる講習を受ける、③講習には参加せず独学でテストを受ける。 デスパシャンテ(手続き代行業者)に相談すると、3日間の講習に真面目に出席すれば、テストの成績は気にする必要はないとのことであった。
私は交通便の良い(地下鉄を利用し約 45 分)CFCs 事務室にて運転免許証、身分証明書、納税者登録票、住所証明書を呈示し受講料 60 レアル(約 3,200 円)を払い講習会受講手きを行った。講習会会場に講義開始 15 分前には必ず到着すること、そして出欠確認は厳格に行うので3日間皆出席が不可欠である旨注意を受けた。その際、本人確認のため右手人差し指の指紋の電子登録を行った。
普通自動車用更新者の講習は週3日、午前7時半から 12 時まで、途中 20 分の休憩がある。早朝会場に到着すると事務室前にて指の指紋照合をする。毎日授業の初めに受講者リストにより講師が名前を呼び出席を確認する。前半の授業が終わる前に受講者リストが回覧され、各自それぞれの氏名欄にサインする。 後半の授業においても初めに講師による名前の確認、終了前にも同様に受講者リストにサインする。授業終了後退出前に事務室前にて指紋を照合する。以上と同じ出席確認作業が3日間続いた。
(9)住居の賃貸借契約
住居の賃貸借契約書の記載事項は不動産業が普及しているか否かにもより異なる。
日本におけるような市販の印刷されたものであれば貸主・借主双方にとって理不尽な記述はないと思われ、一応安心できる。
しかし、私がブラジルで経験した全ての契約書(リオデジャネイロ 1967年8月、1977 年 7 月、レシーフェ 1980年8月、サンパウロ1986年4月)はいずれも新聞広告等で家探しをし、家主側と折り合いが付けば、家主側の弁護士作成のポルトガル語文契約書により契約することになった。現地事情もポルトガル語もよく判らない新参者(1967年の場合)にとっては勤務先で関係事情と言語の判る者に頼みよくチェックして貰う必要があった。
(余談であるが)
ブラジル最初のアパート(日本のマンション)は契約書では全く予想できなかったが、暫くして断水が始まり、酷い時には、1日30分の給水で浴槽の蛇口を開け眠ると翌早朝急激な水の流れ「ジャー」という大きな音に目が覚め浴槽、洗濯水槽や複数の鍋に水を貯める、夜間妻子を連れて徒歩(7~8分)勤務事務所にてシャワーを浴びる等が時折続いたこともありそれに耐え切れず、家主と交渉して貰い、(2年契約であったが)1年経過時に「アパートの内壁を全面的に塗り替える」ことを条件に契約を解除し(同アパート・ビルには多数の家族が住んでいるが断水について文句を言う人は誰もいないと嫌味を言われ)別のアパートに移った。
以後のブラジル(リオデジャネイロ、レシーフェ、サンパウロ)生活では停電には度々悩まされたが、断水には幸い巡り合わなかった。
(注1)ブラジルの「apartamento アパルタメント」は「日本のマンション」、「mansão マンサン」は「大邸宅、豪邸」のことである。
(注2)当時のリオデジャネイロ市街地では地下水道に週2~3回水が流れ、各アパート・ビルではその際強力なポンプで水を屋上の水槽に吸い上げ、貯蔵された水を常時各家庭に供給するが、ポンプが一旦故障し水を吸収し損なうと貯蔵水が少なくなり、断水して節約して使うことになる。 同アパート・ビルでは頻繁に断水が行われるのか、全住人はその対策を講じており、断水に文句を言うものはいないらしかった。
元来リオデジャネイロは水不足で、特に山腹のファベーラ(貧民街)では同じ水を3回(綺麗なものから順次汚れたものへと)使うとのこと。フアベーラから週2回掃除に来る黒人メイドによる実践により知った。
水に溢れる日本とは「湯水のように使う」は逆の意味になる。
家主側が作成する契約書(当時のリオデジャネイロでは普通のこと)の特徴としては次のようなこと。
① 貸主・借主
氏名、国籍、既婚/未婚、職業、住所、身分証明書番号、(新参の日本人は日本旅券/番 号)、納税者登録票番号(新参の日本人は不記載)を記載する。
(注)職業については、profissão(profession)と ocupação(occupation)とがあり、ブラジルでは前者は本来身につけている職種、後者は現在の(一時的かもしれない)職務のことである。
法学士/農業技師で公務員、会計士/アナウンサーで会社員、エコノミスト/旋盤工で会社経営者、理容師/写真家で自営業、保健師/経済評論家で団体職員、地質学者/ジャーナリストで大学教授、医師/プロレスラーで国会議員、作家/タレントで知事日本では終身雇用制が普通だった故か職業には後者を選ぶのが普通であるが、ブラジルでは前者を選ぶのが一般的である。
ブラジルの 2006 年の統一選挙の際大統領選に立候補し,決選投票で一騎打ちとなったルーラ(現大統領)とアルキミン(前サンパウロ州知事)の職業(profissao)について、ルーラは「obrero metalúrgico(金属工)」アルキミンは「médico(医師)」と新聞報道されていた。
② 記載事項
日本の場合と同様な基礎的な事項に加え、当該物件に関わる不動産税、共益費(通常共益費と特別共益費)、備え付機具等の損傷の場合の補償等について記述があるが、その内容について貸主・借主の負担区分について事前に明確にしておく必要がある。
記載事項のうち最も重要なものは家賃額である。特にインフレが継続している状況下では、家賃額は現地通貨では高騰し続けているので、住宅手当(円又はドル換算)を考慮し、更に(通常)共益費の額も勘案することが必要になっている。
月率 50%(年率換算 12,875%)を超える物価上昇を hyperinflation ハイパーインフレーションと言うとのこと。私は月率50~80%の時期サンパウロで過ごしていた。(レストラン・メニューの料金欄は日々変更のため鉛筆書きであった。)
私が賃借していたアパート・ビルの最上階に家主が住んでいたので毎月初め家主宅を訪れ、家賃を現金払いし、雑談をしていた。最初高めに家賃額を定めていても現地通貨建てなので翌月には実際的には1/2以下、翌々月には1/4以下・・・・と直ぐ紙屑的安値となり気の毒なので「ドル建て家賃額にしてもよいよ」と提案すると「ブラジルでは外貨建て契約は禁止されており、自分は弁護士であり違法行為は出来ない」と言うので「現地通貨建ては継続し、3ヵ月毎に適宜家賃額を改訂する覚書を作る」ことで合意した。
(同アパート・ビルは家主の名を冠したビルで、金持ちで温厚な人だった。)
ブラジルでは、契約違反の場合「契約家賃月額の3倍の金額を支払う」という規定が一般的である。罰則が軽ければ簡単に契約違反が生じるので、その防御策として一般的に設けられている条文である。
(後年知ったことであるが)
日本在外公館や日系企業の駐在員を主として取り扱う不動産屋では、家主と交渉し、「上記罰則条項に拘わらず、日本の(親元)勤務先から帰国又は他所への転勤命令が出される場合には、1ヵ月前の予告により契約を解除することが出来る」という特約条文を付すことがある。これを俗に「外交官条項」と言うらしい。
(注)私が最初リオデジャネイロに赴任した時(1967)には貸家の契約期間は2年間が一般的であったが、近年は 30 ヵ月間が一般的になっている由。
アパート賃貸借契約において、家賃未払いやその他契約違反がある場合には借主に代わり、保証人がその責めを負うという条文を明記するのは日本もブラジルも同じである。
しかし、日本では(特別に重要な契約でなければ)親や親戚が氏名と住所、電話番号)を書き、押印(実印でなくても)があれば、それで十分とするのが一般的である。そして保証人としての能力があるか否かは確かめないのが普通である。
ブラジルでは、保証人の氏名・住所・身分証明書番号・納税者登録番号を明記し、サインを行い、公証役場でのサイン証明が必要である。そして厄介なのは保証人としての意志と能力を示すため、当該物件所在都市に所在する不動産の証明書を家主側に提示する必要がある。そして(当該不動産が夫婦共有制である場合)保証人本人の配偶者のサインとサイン証明も必要となる。
当該市内に不動産を持つ適当な保証人がいない場合には、銀行などに依頼し保証料を支払い保証役を引受けて貰う。
(注)日本では従来の連帯保証人制度では(遠隔地居住など)不便なこともあり、また
保証会社が増加したこともあり、近年では不動産会社が保証会社を強制的に指定し、保証料を支払わせることにより、将来の債務不履行の担保としている。そのため、連帯保証人は取りやめ「単なる連絡人」とすることが増えている由。日本でも性悪説化が進んでいるのだろうか。 (最近のブラジル事情は不詳)
⑤ 紛争処理
貸主・借主間にトラブルが生じた場合、ブラジルでは両者間では円満な解決が出来ない場
合を想定し、裁判所の裁定に委ねることを前提に、提訴する裁判所をあらかじめ定め、その裁判所を契約書に明記することが一般的である。
日本では「貸主・借主両者はお互いに信義を守り、協力し、誠実にこの契約を履行することを約す。」と言うような表現が契約書に使用され、両者ともトラブルになりそうなことは起こさないことを想定している。家賃支払いの遅滞等の問題が生じる場合には、不動産屋が仲介者としての役割を果たすことになっている。
(10)日伯逆転事情
ブラジルが性善説で日本が性悪説と思える事例がある。
私は 2003 年1月から 2014 年4月までブラジル・サンパウロでの隠居生活中、地下鉄1号線と2号線をよく利用した。日本・東京での終活生活として 2014 年4月以降現在まで 「JRの中央線(快速)と中央総武線(緩行)」及び「地下鉄丸の内線と東西線」を時折利用している。
以上の鉄道において日伯いずれにも列車の内何両かに「優先席」の座席があり「優先席」という明瞭な文字と高齢者・障害者・傷病者・妊婦・乳幼児連れなどの交通弱者などを優先者とする図柄やアナウンスがあり、若者や不自由がない者は優先席をこれら交通弱者に譲るべきということは周知されている筈である。
私の経験では、杖をついて優先席の近くに立っていると、直ぐ席を譲ってくれる人は僅少であり、周囲に弱者がいることは無視して熱心にスマホに取り組むか、目を閉じて居眠りを装う者(実際に居眠りしている者も僅少いるかもしれないが、大方は目的駅に到着するや否や突然席を立ち下車する)が多い。交通弱者の場合席に座りたければ優先席に行けばよいという意識があるのか、一般席では、日本人からは席を譲られたことはないが、若い外国人にはそのような意識がないのか、何回か席を譲られたことがある。
サンパウロでは優先席は当然優先者の席という意識が徹底しているようであり、また一般席でも、私は当時 70歳代でまだ元気で杖なしの状態であったが、白髪頭を見ると少し遠くからでも声をかけてきて、席に座るように促されたことが度々あった。サンパウロでは優先席は当然であるが一般席でも弱者には席を譲るのは当然という意識があるのであろう。日本は諸外国に比しマナーやモラルの意識が高いと言われているが、鉄道(地下鉄)の優先席に関する意識や行動について、日本人(東京地域だけかもしれないが)はブラジル人よりも低いと言わざるを得ない。
その点についてはブラジルが性善説的で日本が性悪説的現象と言えるのかもしれない。
以上