日本メキシコ交流400周年とメキシコ革命100周年を記念して南山大学で開催した3回のフォーラム成果を纏めたものである。転換期のメキシコの姿を描き出す9本の論考からなっており、前半4章でオアハカ州先住民の移動と共同体・地域の変革の可能性、メキシコからの対米移民の変容、米国の1975年および82年投票法改訂の際のヒスパニック組織の言動、グローバライゼーションの時代に先住民がどのように生きているかを取り上げている。
後半5章は、国際収支制約からみた輸入代替工業化経済開発の検証、思想家で政治家でもあったホセ・バスコンセロスと近代メキシコ壁画運動時の壁画家たちとの確執、ユカタン半島のカンクン観光開発にともなうマスツーリズム状況下にあるマヤ系先住民の自律性、国民的儀礼となり、各地で盛大に祝われるようになった「死者の日」の観光化に対して、伝統を再編成しようとする各地の動きを、最後にピラミッドとテキーラに代表されるナショナル・イメージを、前者を先スペイン期、後者をスペイン植民地期の文化遺産として広く世界遺産として認識されていったかを述べている。
メキシコの過去と現在、そして未来を多岐にわたる切り口からみており、あらためてメキシコを理解する上で参考になる論考集である。
(行路社 2011年9月 217頁 2400円+税)
『ラテンアメリカ時報』2012年夏号(No.1399)より