1926 年生まれで、パチスタ独裁政権に反乱を起こして 53 年 7 月にサンティアゴ・デ・クーパのモンカダ兵営襲撃に失敗し囚われるが、釈放されてメキシコに亡命し、56 年に小型船でキューパに潜入、シエラ・マエストラ山中 でゲリラ活動を開始、ついに 59 年 1月にパチスタを亡命に追いやりハパナに入城してキューパ革命を達成するまで を、フィデル・カストロ自身が初めて書いた伝記。
幼少から学生時代と 1958 年当時のキューパの革命闘争の状況をごく簡単に述べた後、シエラ・マエストラにおける多くのゲリラ戦を詳細に記録している。国家の最高権力者の著作ならではの、この間の記録に値する文書、戦闘時の彼我の対陣や移動を示すカラー地図、ゲリラ戦陣の中での姿や当時政府軍が使っていた各種武器の写真が豊富に収録されており、ゲリラ戦時期の極めて貴重な歴史文書になっている。この後をフィデル自身が記述した続編もすでに翻訳作業に入っており、遠からず同じ出版社から刊行されるとのことで、合わせ読めばキューパ革命指導者の口から経緯とその間何を考えていたかがよく判るだろう。
(フィデル・カストロ・ルス 山岡加奈子、田中高、工藤多香子、富田君子訳 明石書店 2012年9月 628 頁 4,800円十税)