【演題】JICA中南米2所長帰国講演会
グアテマラ:多様な自然と文化、開発課題に富んだ国
ベリーズの現状と今後の協力の可能性
【講師】山口 尚孝氏 グアテマラ事務所 前事務所長
佐々木 十一郎氏 ベリーズ支所 前支所長
【日時】2023年8月1日 10:00~11:30(日本時間)
【場所】リモート
【参加者】71名
グアテマラ
グアテマラは危険な国と聞いていたが、結果的には山口所長にとって良い国であり、「JICA職員冥利につきる」赴任地であった。治安はピーク時(2011)より改善している。首都以外の地方は極めて安全。多様な文化と豊かな自然を有し、人が優しい。課題は政治・行政の脆弱性、一次産業中心の経済、教育、首都圏の交通渋滞等。
JICA事務所は職員2名を含む20名から成り、道路建設を主とする円借款、技術協力を主に無償資金協力、研修事業、大学連携(コロナ前)、海外協力隊等の事業を行っている。コロナ禍では国境閉鎖となり、協力隊員等を陸路メキシコ経由で退避させた。
山口所長が事業運営の上で留意したのは、総務・経理・調達の強化(現地職員へ意識づけにより、政権やカウンターパートが変わっても組織的取組みができるようにする)、広報(小さな成果を可視化し積み上げる)、「やりっぱなしにしない」ことに対するこだわり、コミュニケーションの重視(誘われたらどこにでも出向く努力)等。
最後に多くの写真(JICA事務所から見たアグア火山、民族衣装、ティカル遺跡、警察プロジェクトによる警察官と地方の人々の笑顔等々)による現地の様子が示された。
ベリーズ
ベリーズは唯一SICAとCARICOMの両方のメンバー国であり、中米(大陸)とカリブを結ぶ役割を果たしている。多民族融合国家であり、民主主義と法の支配の下、政治は安定している(2020年に中道左派のブリセーニョ政権成立)。グアテマラと共に台湾承認国であり、ウクライナ情勢では一貫してウクライナを支持。世界第2位のサンゴ礁とマヤ遺跡により、観光がGDPの約45%を占める。
ベリーズに対する開発協力方針の大目標は、小国(島嶼国)としての脆弱性の克服、重点分野は、温暖化対策を含めた「強靭な社会の構築」と「持続可能な経済開発」。対ベリーズ経済協力ではEU(英国を含む)とOPEC(エネルギー依存)が上位にある。日本の協力は、ボランティアや人材育成による信頼関係の構築が中心。帰国研修員による同窓会、Action Plan発表会を実施。昨年11月にベリーズ大学でのJICAチェアで佐々木所長は講師を務めた。今後の課題は、これまでの協力によって培われた人脈を活かして「相乗効果」を出してゆくこと、また、TSUBASAプログラムに参加する日本の企業(募集中)を通してニッチな分野での可能性を見出してゆくこと。
講演後の質疑では、日本の協力によるグアテマラの国道7号線の現状について、ベリーズの人々の真面目で優しい国民性の背景、ベリーズのサンゴ礁の保護、両国の台湾との関係の背景等に対する質問が出され、講師のお二人から丁寧にお答えいただいた。なお、講演資料は協会ホームページに掲載する。
【講演会資料】
<会員限定:資料・録画>JICA中南米2所長帰国講演会 グアテマラ事務所 山口尚孝 前事務所長/ベリーズ支所 佐々木十一郎 前支所長