『ラテン・クラシックの情熱 スペイン・中南米・ギター・リュート』 渡辺 和彦 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ラテン・クラシックの情熱 スペイン・中南米・ギター・リュート』 渡辺 和彦


表題は、スペイン、中南米音楽とギター、リュートのクラシック系音楽の総称としての著者の造語である。クラッシク・ギターの専門誌『現代ギター』に連載したエッセィから選び加筆した31編、第一章は「スペインを聴く」、第二章は「中南米を聴く」、第三章は「ギターとリュートを聴く」から成る。

「中南米を聴く」では、半分の5編がブラジルの生んだ偉大な“知られざる作曲家”ヴィラ=ロボス(1887〜1959年)に当てられている。彼の讃から始まり、ギター協奏曲、ショーロス、弦楽四重奏曲、交響曲、ピアノ曲、ピアノ協奏曲などの作曲された経緯や特筆、欧州等の音楽家との交遊のエピソードや作品についての著者の評価が紹介されている。

続けてアルゼンチン・タンゴの異端児といわれたアストル・ピアソラを指導したアルゼンチンの作曲家アルベルト・ヒナステラに、最初は歌曲でヴァイオリン協奏曲になりジャズにまでなった名曲「エストレリータ」が有名になってしまったメキシコのポンセ(1882〜1948年)を取り上げた後、指揮者ドゥダネル等数々の世界で活躍する演奏家を輩出した、ベネズエラの音楽教育と貧困脱出プログラムを併せもった「エル・システマ」の活動やベネズエラの音楽家について述べ、ピアソラを日本で積極的に紹介した演奏家小松真知子(ピアノ)勝(ギター)と亮太(バンドネオン)一家、特にいまや日本を代表するバンドネオン奏者になった小松亮太やチェリストのヨーヨー・マの「プレイズ・ピアソラ」などの演奏により広がった日本のピアソラ受容史、さらには「ムード・ラテン音楽」の思い出に至るまで、実に多岐な音楽談義になっている。

(水曜社2013年5月253頁2300円+税)