ラテンアメリカのレストランのインテリアとグラフィックデザインの写真集。ペルーからリマ10店、クスコ7店、アルゼンチンはブエノスアイレスのレストラン、カフェ、バル、食品店を含め33店、メンドーサのが8店、メキシコはメキシコ市の23店が、それぞれ2〜4頁の美しいカラー写真を使って、店の外観、店内、インテリア、什器、メニューその他のグッズ、時には店の平面図までも紹介されている。供している料理の写真はごくわずかで、あくまでインテリアとその店で使っている小物類などのデザインの素晴らしさを紹介するものである。うち、リマの4店、メキシコ市の1店は、店名等から日本料理店と思われるが、その他の店でも箸などの小物が使われている例もあり、日本料理の影響も窺えるものがある。
近年メキシコ伝統料理がUNESOの食の分野での無形文化遺産に認められ、ペルー料理もそれに負けじと目指しているごとく、これら3か国をはじめラテンアメリカの経済成長が進んだ国々の料理とレストランのレベルは、十数年前の記憶とは大きく変容し、向上しているが、料理ばかりでなくそれを楽しむ雰囲気作りにかかるインテリアなどのデザインも急速に垢抜けしてきたことを感じさせる。本書はそれら現在のラテンアメリカの先端を行く都市食文化の象徴であるレストランとそこで実際に使われている小物類の洗練されてきたデザインを通じて、大きく変わったラテンアメリカ文化の一端を紹介しており、ぱらぱらとめくっているだけで楽しい写真集になっている。
(斎藤正洋撮影・編集アルファ企画発行美術出版社発売2013年2月235頁 9500円+税)