「世界中の人々は、生きる手段であり楽しみである「食」によってつながっている。ある土地の心に触れたければ、その郷土料理を食べてみるのが一番の近道」という視点から、世界の食文化を広く浅く、世界120か国を超える国々や地域の食材・料理をについて、味わう価値のあるメニューにとどまらず忘れられた歴史や消滅に危機にある伝統、知られていない習慣、創意工夫をこらした調理法、珍味が紹介している。ウェブコミュニティ「アトラス・オブスキュラ」への50万人以上の投稿者、編集者チームが世界各地で行った調査を情報源としている。
うち中南米(349~406頁)では、メキシコ、中央アメリカ(ベリーズ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマ)、カリブ海諸島(アンティグア・バーブーダ、キューバ、ドミニカ共和国、グレナダ、グアドループ、ハイチ、ジャマイカ、マルティニーク、米領バージン諸島、プエルトリコ、トリニダード・トバゴ)、南アメリカ(アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ベネズエラ)が取り上げられている。
米国人中心の編集チームの視点で、ブラジルのフェジョアーダやシュラスコ、ペルーのセビーチェなどの代表的な料理は載せず、実に様々なエピソードを紹介していて、興味ある地域、国などを拾い読みすれば楽しい。
〔桜井 敏浩〕
(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他 今井仁子・大浦知鶴子・梅田智世・山本めぐみ・片神貴子訳 日経ナショナル ジオグラフィック 2023年5月 450頁 3,900円+税 ISBN978-4-86313-539-7 )