ペルーは1821年の独立以来何度も憲法を改定してきたが、本書は憲法典そのものの意味を比較するのではなく、歴史、政治、社会、経済、文化の諸相から、「大統領中心主義」の統治規範と実態を検証することで、「共和制憲法原理」の歴史的意義を掴もうというものである。
序章で比較憲法学からの大統領制研究の方法を説明し、第1章で独立期の独裁統治下での共和国大統領の誕生、第2章で1920年憲法の連続再選阻止などによる寡頭政治からの脱却、国際環境の大きな変化を受けての1933年憲法、第3章で社会・経済危機と政治変動を受けての1979年憲法と、新自由主義時代に入っての1993年憲法による政治経済体制の樹立、フジモリ再選政権下での法再編を検証している。終章でこれらの歴史を振り返ることで、国家間権力格差構造に対する「大統領中心主義」の限界と、それによる国民主権の実現の可能性を探り、日本の「天皇制国民主権」を皇室の国際親善とペルーに存在する日系社会との関係で言及している。
著者は二度にわたり在ペルー日本大使館で専門調査員等を務める傍ら、ペルー・カトリカ大学で憲法学を専攻し、現在は愛知県立大学准教授、本書は名古屋大学に出した博士号論文に加筆修正を加えたもの。
〔桜井 敏浩〕
(日本評論社 2013年2月 227頁 5,500円+税)