執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(早稲田大学法学研究科講師・パナマ共和国弁護士)
I. 政治
A. 選挙法改正法案
与党PRDおよび野党CD党がそれぞれ国会に選挙法改正法案を提出した。現行法の下では、ある地域で議員として当選できる人数は当該地域の人口によって定められ、候補者人数制限も規定されている。PRDの法案では、候補人数、および当選決定ルールが改正される。
CD党の法案はマルティネリ元大統領のRM党と同盟を結んでいる派に提供され、主に選挙期間中の刑事責任免除の拡張を目的としている。現行法においては選挙の候補者の裁判を行うには、選挙裁判所の許可が必要とされ、その要件と期間が明記されている。ある候補者についての裁判が許可された以降、他の裁判に関する再申請が不要となり、一般人と同じような要件で行われる。CD党の法案では選挙裁判所の許可は裁判ごとに必要となり、責任免除期間が曖昧となる。PRDとCD党の法案の他、無所属議員の改正法案もある。
これらの改正法案は既に批判されている。選挙裁判所のJunca判事が、総選挙の8カ月前に選挙法を改正することは望ましくないと説明し、改正に反対している。CD党の大統領候補者であるルー(Roux)氏は、PRD党の法案は選挙のルールを変える目的で、卑怯であると反対している。これに対して、コルティソ大統領が、PRD党の法案を検討すると述べたが、他の法案についての意見を示していない。
II. 経済
A. 観光業界
パナマ観光局は、2023年6月まで、クルーズを含めてパナマを訪問した者は133万人(前年同期比約50万人増)を超えたと発表した。そのうちの観光客(1日以上12カ月未満滞在する者)は約94万7千人(前年同期比37%増)となり、平均滞在時間8日間、1日に平均299ドルを利用することがわかった。また、パナマホテル連合会のヒメネス会長が8月時点までに、パナマ市の客室稼働率は56.5%であり、パナマにある330ホテルのうち42はまだ運用を再開していないと説明した。
B. パナマ運河の船舶通航量減少
2022年10月から2023年8月までの間、パナマ運河の船舶通航量は、11,663隻となり、前年同期比3.6%減少しているとわかった。そのうち、3,326隻(前年同期比3,322隻)は拡張された閘門を利用した。政府と異なってパナマ運河の会計年度は10月1日から9月30日までと定められ、Vásquez運河局長は、今年の干ばつはパナマ運河に影響を与えるとと認めつつ、船舶通航量の減少は財政目標達成の妨害とならないと述べている。
III. 外交
A. 移民問題
アメリカに向かっているコロンビアから入国する違法移民問題が継続している。入国管理局長は9月下旬時点でダリエン県からの入国者が40万人を超えたと発表した。ダリエンにあるパナマとコロンビアの国境がダリエン地峡と呼ばれ、深さ60mの谷床、および1800mを超える山がある熱帯雨林地帯である。
カスティージョ社会発展大臣は、移民のうち6万人は子供、2か月から7か月の新生児は3万人、であるため、非常に悩ましい状況であると説明している。また、ピノ国家防衛大臣がパナマはあくまでも「通り道」であり、危機の原因は移民の出身国と目的国にあると述べている。ゴザイネ入国管理局長が、移民が先住民の土地を占有したり、川等を汚染させたり、パナマの当局に提供される食べ物を拒んだり、町の交差点で喧嘩することを指摘している。また、移民中、ギャングやテロ組織に属している者も発見され、レイプのような犯罪が起きている。さらに、歩けなくなった女性は息子に見捨てられたケースもあった。
9月20日に、国連総会のきっかけにパナマのコルティソ大統領とコロンビアのペトロ大統領が移民問題について対話を行った。移民問題についての両国の立場は一致していないことが判明した。パナマにとって移民申請についての整備が必要であり、コロンビアに移民のコントロールを要請している。これに対して、コロンビア政府が、移民は人道的に取り扱うべきだという立場をとり、出国の管理をほとんど行っていない。ペトロ大統領との対話後、コルティソ大統領が国連総会で、移民問題に関する国際援助を改めて求めた。以 上