執筆者:ピーター藤尾(在チリ・サンテイアゴ)
「2023年10月30日ー11月5日」
「政治」
1)ボリッチ動向
週の始め南部のビオビオ州に行きました。そして後半はワシントンに飛んでアメリカ大統領と面談しました。彼はパレスチナ問題でパレスチナ援護をしていますから、イスラエル側のバイデンとは揉めたかもしれませんね。その面談時にイスラエルの攻撃の中止とキューバへの制裁緩和を依頼したとか。彼は駐イスラエルのチリ大使を召還し、明日の月曜日、モネダ宮殿で面会する由。それからアメリカにいるとき、APEP会議に参加してペルーやエクアドルの大統領などと会議しました。
2)新憲法素案
33対17と多数決で新法案の素案が決定です。今までの動きではピノチェットの軍事政権下でできた現行憲法を新しくすると左翼が試みたのですが、この第2次案では逆に右翼が賛成、左翼が反対になるとか。今までチリ中道左翼の中心だったキリスト教民主党DCは賛成を表明しています。これから新憲法是非のテレビの宣伝が始まりますが、各党はどんな宣伝をするのか自分たちの方針をはっきりさせる必要があります。それは来年以降の選挙に直接関連します。そのため、来月17日の投票日までこの話題が政治だけでなく経済関係でも関心を呼びます。経済評論家がこの新憲法案がどのようにチリ経済に影響するか論議しています。
さぁ来月の投票でどうなるかな?選挙権のある人にはその投票は義務です。新憲法支持の人が少しづつ増えていると言う世論調査の発表が出ました。内務大臣がこの投票の結果はボリッチ大統領の見解と関係ないとしていますが、大統領が新憲法について国民が勝手に選びなさいとするのはあまりにもレベルが低いですね。
3)民間健康保険
政府は最高裁判所が決めた約10億ドルの払い戻しに関し、政府案を設定しました。如何に健康保険会社が倒産しないで払い戻しさせるかがカギです。私の手にもいくらか戻って来ますね。
4)アタカマ公立学校
先週、大問題になりましたが、今週は新聞に小さく報道されています。ボリッチがクレームするからでしょうか。政府の提案を教員組合は拒否してストは継続、生徒・学生は2か月も放棄されています。政府の責任はそんなに軽いのでしょうか?
「経済」
1)銅価格と為替
1ポンド3.66ドルとほとんど先週と変わりません。為替はペソが少し強くなって1ドル899ペソと900ペソを割りました。予想では850ペソまでどんどんペソが
強くなりそうとか。
2)経済成長率
10月は9月と同じでした。上昇も下降もありません。
3)株式市場IPSA
落ち込みが続いていますが、週末にかけて少し良くなり、今週は5620ポイントでした。6月1日に6386ポイントまで昇ったのですが。
4)失業率
7-9月の失業率は8.9%と前年より少し上昇。良くなる気配がないですね。
5)新車の販売
1-10月の新車の販売は26.1万台で前年対比23%の減少になりました。もう消費者も景気上昇の期待は持てないのでしょうか。
「一般」
1)犯罪
パンアメリカ大会の選手村に泥棒が入ったとか。二人犯人が逮捕されました。泥棒が入るのは惨めだが、逮捕したのは良かった。マプチェの問題で指名手配されている9名がいつになっても逮捕されません。チリに不法入国した19.4万人のうち10.5万人は手続きを終え、正式入国が認められました。アメリカ大使館が自国民にビーニャ、バルパライソに観光で行く時は犯罪に気を付けるように警告しました。刑務所で囚人の検査があり、多くの武器(刃物)と携帯電話が見つかりました。 以 上
「11月6日ー11月12日」
「政治」
1)ボリッチ動向
パラグアイ大統領のペーニャがチリを訪問してボリッチと面談しました。ペルーの前大統領カスティジョがボリッチ批判しました。先週のAPEP会談でボリッチがペルー大統領と面談した件なのでしょう。
パンアメリカ大会
ボリッチに挨拶をした選手団はモネダ宮殿の2階に上がり、窓から姿を見せました。外で応援する人に挨拶していました。ボリッチはその大会の開会、閉会式に参加しただけでなく各種のスポーツを見ましたから、かなりのスポーツ好きですね。彼はパンアメリカ大会が大成功したから次の目標はオリンピックだとしています。
キューバの選手が亡命要求
これは政治問題になっています。チリ共産党は友好国キューバの批判をさせないようにしていますが、その選手の一人が「キューバなんて最低だ、刑務所に入っているようだ。私はチリに住みたい」と言っています。世界中にスキャンダルが広がりますね。政府は彼らに短期滞在ビザを出しました。
来年度予算
予算案作成が進んでいますが、政府案を実施するには国債の増額は避けられないが、それを少なくする方向で経済相は検討中とか。するとボリッチと揉めるわけですね。
2)新左翼不正問題
もうずいぶん長い間、新左翼グループが政府の貧困層援護の基金を不正に使用していると問題になっています。北部のアントファガスタで始まったのですが、今週、監査委員会が、チリ中全部で同様の問題があると発表しました。彼らは検察ではないので裁判には直接関係しませんが、問題が大きくなっていることは確かです。政府は、責任はだれにせよ、犯罪は裁判所が結論を出すとしています。それに関連する住居省の大臣モンテスは辞任する気持ちは無いとコメント。自分の責任は認めないわけですね。ボリッチ側近の2階部隊のフリスピ(新左翼)は議会の呼び出しを受けながら、これまで逃げ回っていましたが、今週その場に出席しコメントしました。野党側は彼の文言は信用しにくいとしています。
3)新憲法是非の投票
新憲法委員会は草案が決定したので、それをまとめてボリッチに提出しました。これで準備は完了です。これからはその投票に向けて各党(組織)が新憲法を認めるのか拒否するのかの宣伝を始めます。もっとも与野党内部で組織と違った見解を持つ議員(会員)がいるようで一体化はされていません。いろんな識者の第1回目の草案と今回はどう違うのかがコメントされています。あと、1か月間、この話題はますます熱気が高まりますね。この2次草案に反対するグループのリーダーに元大統領のバチェレットが手を挙げたようです。
「経済」
1)銅価格と為替
1ポンド3.63ドルと先週よりやや低めになりました。為替は1ドル902ペソとペソ安です。銅の生産ですが、コデルコの9月は5.3%マイナスになりました。ただ全社合計では2.2%の上昇とか。北部のイキケの近くにあるセロ・コロラドが30年の歴史の後、閉山することになりました。採算が合わないのでしょうね。この先、他のどの鉱山が同じ道を歩くでしょう。
2)物価上昇率IPC
10月は0.4%の上昇でした。落ち着いてきています。
「一般」
1)テレトン
障害児童の援助組織に寄付する基金を集める活動ですが、今年で45回目になります。ボリッチはその開会式に参加しました。今年は380億ペソの基金を集め、目標を10億ペソも上回りました。
2)コロナ問題
10月の22-28日で21人死亡、新規患者3433人、陽性率4.0%とかなりひどいです。8月にマスク着用の義務が外されましたが、コロナはまだ生き延びているようですね。その次の週(10月29日-11月4日)は新規患者3500人、陽性率2.0%でした。
3)犯罪
南部の町コンセプシオンのショッピングセンターでなんと3か所で爆弾騒ぎがありました。どこかのテロリスト・グループが肩を組んで攻撃をかけているのでしょうか。チリも危ない国になっていますね。 ランカグアで経営者が誘拐され、身代金を支払った後、釈放されました。テレビの番組の様です。南部の州のレナイコ区長が婦女暴行などの容疑で指名手配になっていますが、もう一週間ほど逃げまくって捕まりません。写真入りで大きく報道されていますが。どこに隠れているのかな?と昨日、書きましたが、今日の朝にカニェテ警察署に自首して刑務所に入れられました。彼は自分の無罪を証明しますと言っていますが、それなら9日間の逃亡の意味はあるのかな?
バルパライソ市長の住居に泥棒が入り、いろんなものを盗んで逃げたとか。国会議員の家もやられているから次はボリッチの家かな?
4)大学ランキング
大学ベスト10が発表されました。チリから4位にカトリカ大学、5位にチリ大学が入りました。1位はブラジルのサンパウロ、2位はメキシコ、そして3位は
アルゼンチンの大学でした。 以 上
「11月13日ー11月19日」
「政治」
1)ボリッチ動向
アメリカに飛びました。サンフランシスコで開催されるAPECに参加する為です。少し前にバイデンに会うためワシントンに行きましたが、今回の旅を利用していれば2度も訪米する必要はないのでは? なんでももうすぐ国連幹部に同伴して南極へ飛ぶらしい。彼はモネダ宮殿で内政の問題を検討するよりあちこちに飛ぶのが好きですね。
内政問題ではアタカマ州の公立学校の先生のストがまだ継続。もうすぐ大学入試がありますが、その学生はどうなるのかな?それから健康保険イサプレの問題でこのままいけば、多くの会社が倒産し、一般市民の保険が大きな危機になると言われます。
政府とシノバックの関係ですが、中国メーカーは「チリをやめてコロンビアに工場を作ると言う計画は無い。コロナ問題がどうなるか様子をうかがっている」 とコメントしています。ちなみに最近の数字は(11月5日ー11日で死者34人、感染者4087人、陽性率4.5%)と問題があるのは明白です。
それからボリッチは内縁の妻と関係悪化とか。そんな個人的なことは重要ではないと言う意見もありますが、その女性の安全を政府が守る責任は消えるわけですね。彼女は自分の持ち物を二人が住んでいた住居から引き出したとか。
2)新憲法可否の投票
賛成グループと反対グループの宣伝がテレビで始まりました。キリスト教民主党DCは賛成と言われましたが、反対グループにいます。もっともそのメンバーだった何人かが賛成を表明しています一般に与党側が反対、野党側が賛成です。与党側の宣伝はこの新憲法には民主主義も愛情も認められていないとか。野党側は4年前の社会騒乱を出してこんな騒乱を正常化するのは認められないとしています。世論調査の結果では、新憲法反対は50%、賛成は38%、そして未決定が12%です。
3)汚職問題
ルイス・シジャは有名な弁護士ですが、彼と仲間が情報を引き出すため税務署のメンバーに金を渡している汚職問題が明らかになりました。彼と仲間の間の電話連絡が録音され、公になったもの。その録音は正当なのか違法なのか知りませんが。有罪になればもちろん刑務所行きです。彼は前政権のピニェラとはかなり深い関係がありましたが、現在はモネダ宮殿2階の新左翼ともコンタクトがあるとか?? そのうち、彼から左翼・右翼政権の秘密が漏れるかもしれませんね。
「経済」
1)銅価格と為替
銅の価格は1ポンド当たり3.69ドルと、この30日で一番良いところに来ました。このため為替も1ドル881ペソとペソが強くなりました。
2)ガソリン価格の減少
1リットルで30-40ペソほど安くなりました。久しぶりの値下げにドライバーはニッコリです。
3)金利
マンションなどの家屋購入のための金利が過去14年で最高のレベルにあがりました。ますます売れ行きが落ちますね。
「一般」
1)犯罪
手りゅう弾が警察官に投げられる
警官がいつものように、道路で運転免許証などの書類チェックをしていると、オートバイに乗った男が警官に手りゅう弾を投げつけ、それが当たって警官は重傷になりました。食料配達などの仕事に見せかけて、銃器や手りゅう弾などの武器を運ぶ仕事もあるのですね。それが警官に調べられそうになったので、その爆弾を投げつけたわけです。その男は逮捕されましたが、重症の警官はどうなるかな?
誘拐犯の増加
先日、経営者が誘拐され、身代金を払ったら釈放されたと言う事件がありましたが、今週にその2・その3の事件が起きました。これは利益が高いと犯罪グループが考えているのでしょうね。ますます誘拐事件が増えそうです。ボリッチはこの事件に関し、出張中のアメリカから、こうした悪質犯罪は認められない。これを抑えるように全力を挙げるとコメントしました。しかし同じことが継続しても今の所、彼は何もしないと言うのが事実です。
マプチェの過激グループCAMのリーダーの息子
放火と殺人未遂で有罪になったその息子は18年の刑になりました。
2)ごみ問題
サンティアゴ区で従業員がストに入り、街中にゴミが溢れています。それでも、この週末に区役所と労働組合が合意に達し、月曜日からごみの収集が始まるとか。その区の区長は共産党です。普通、共産党が組合をあおってストに入れると言うケースが多いですが、ここは逆でした。 以 上
「11月20日ー11月26日」
「政治」
1)ボリッチ動向
スポーツ好きな彼は現在進行中の障害者パンアメリカ大会の競技場に顔を出しています。もちろん、今日の閉会式にも参加しました。それから来月、アルゼンチンに新大統領就任式に行くようです。新大統領が先日、サンティアゴに来てボリッチの事をこんなレベルでよく大統領をしていれるなと見下しました。するとボリッチもこう言えそうですね。「彼を祝いに行く気は全くないが、チリ大統領としてアルゼンチン新大統領を祝うのは当然の義務だろう」
日本でもミレイ新大統領に関する話題が飛び交っているようですが、チリではまるで国内問題のように頻繁に報道されます。彼の人気が続くとチリの次の大統領は左翼でなく右翼になるでしょう。アルゼンチンの現大統領は任期を終えるとすぐにスペインに移住するとか。アルゼンチンに残ると悪口ばかり聞かされるからでしょうね。ところで駐アルゼンチンの新チリ大使が任命されました。ビエラガジョですが、元国会議員で以前その大使の職も経験しています。ところで前大使は共産党員で、党の書記になるため辞任しました。
今週、ボリッチは国連幹部に同伴して南極へ飛びました。環境問題関連とか。同問題を扱うドバイのCOP28会議にも出席する予定でしたが、あまり外遊が多すぎるとし内政問題を扱うため中止にしました。環境問題として南極の氷が解けているのが問題視されていますが、地球の気温が少し上がる・下がる温暖化寒冷化は1万年も前から繰り返しているわけで、大問題ではないと思います。
アタカマ州の公立学校のストが終わり、授業が始まったとか。年末の休みがどのように変更されるのか詳しいことは分かりませんが、一応前進です。直ぐに大学の入試がありますが、大丈夫かな?さてボリッチを指示するは26%、不支持は61%とか。
2)新憲法委員会
毎日、2回テレビで新憲法賛成・反対の宣伝がされます。その評価が新聞に掲載されました。両者の言っていることが正しい・間違っている・疑問があるの三つに分けられました。プロの目には宣伝が間違っていると言うこともあるのですね。私はノーの宣伝の中で「現行の厚生年金システムは間違っている」とされたところはおかしいと思いました。私はそのシステムを最初から利用しその年金で生活していますから、現行システムは正しいと考えます。
移民問題が話題になっていますが、チリ人のほとんどが移民です。それも500年前に侵入してきたスペイン人の子孫ではなく、この100年くらいに移住してきた欧州人の子孫です。ユーゴスラビアからパタゴニアに入った移民の孫が今のチリの大統領です。それを考えれば移民は犯罪を犯すとか、チリ人の職業を奪うと批判するのはおかしいですね。100年前に自分たちがやったのと同じですから。
「経済」
1)銅価格と為替
1ポンド当たり3.76ドルと最近珍しい良い数字。中国が良く頑張っているからとか???このため為替も1ドル873ペソとペソが強くなっています。
2)GDP
7-9月の数字は0.6%の上昇でした。たいした数字ではないですが、一応プラスですからね。関係ないですが10月の航空機の使用はコロナ前のレベルをわずかですが越えました。元気が戻ってきていますね。そういうプラス思考から、来年2024年はチリのGDPは何とかプラスになるだろうと予想されていましたが、ここに来て、風向きが変わり、来年も今年と同じように成長率はゼロかマイナスになるかも知れないと言われ始めました。希望が薄れた若しくは消えていったのですね。
3)日智合同会議
第33回大会が東京で開催され、両国合わせて150名の参加者でした。チリ側はフレイ元大統領をリーダーにしました。会議はエネルギートランジションなどが話し合われました。そのフレイ元大統領はキリスト教民主党DCですが、新憲法に賛成するとか。
「一般」
1)犯罪
世論調査で91%の市民がチリの犯罪状況は最悪だとしました。問題ははっきりしているのにボリッチは何もできないわけです。もちろんモネダ宮殿内では大混乱で、犯罪抑制に何をすべきなのかが議論されていますが、すっきりしません。新聞の社説にそれは
政府の無策、無責任と厳しく批判されています。この金曜日の午後から夜まで、特別警戒として3000人の警官が道路で39000人を検問し、麻薬所持を含め700人が逮捕されたとか。それからアラウカニア州で放火事件が起きました。
アルガロボ区長の汚職問題が発覚し、彼は裁判が始まるまで刑務所に入れられました。昔はそんな犯罪は無かったのですが。
2)コロナ問題
今週の新規患者は3860人、平均陽性率は4.4%、そして死亡者は44名でした。またワクチン接種が始まりました。