連載エッセイ309:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その20 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ309:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その20


連載エッセイ 309

南米コロンビア・雲と星が近い町から」その20

コロンビア民芸品博覧会・質の高い伝統工芸品を紹介

執筆者:新井 賢一(Andes Tours Colombia代表 ボゴタ在住)

既に大分日が経ってしまった話です。毎年12月に開催される「コロンビア民芸品博覧会」には国内各地で作られている様々な伝統工芸品が勢揃いします。首都ボゴタでは滅多に見かけない逸品もあり、私自身この機会を毎年楽しみにしています。

他国の伝統工芸品の全てを知っている訳ではないので確たる証拠は何もありませんが、コロンビアの民芸品・手工芸品は他国と比較して単なる観光土産のレベルを超えた実用品として十分使えるものが多く、質の良さと作り手の手先の器用さは群を抜いているのではないかと思っています。

毎年開催されるこの民芸品博覧会を楽しみにしている人は多いと思います。例え買わずともコロンビア国内各地にどれだけの民芸品・手工芸品が存在し、その伝統技術が継承されているかを知る良い機会でもあります。私も仕事柄コロンビアを訪れるお客様に「お土産」としてどのようなものがあるのか知っておく良い機会でもあります。

こちらは昨今日本人女性の間で人気が高まっている、国内北部に住むワユー族の女性が一つ一つ手編みで作り上げる手提げバッグです。カラフルな色合いが特徴で、幾何学模様の一つ一つにはワユー族独特の象形文字的な意味があります。美しいデザインはまさに女性受けするものですね。このコロンビア民芸品博覧会で数多く出店している伝統工芸品の中でもひときわ目立つ存在です。

こちらのワユーバッグは通常サイズの二倍以上の大きさで、実用品として買い物バッグなどに使える大型のもので、まさに逸品です。但し全て手編みですので値段もそれなりにするもので、日本円換算で約25,000円程度します。ワユーバッグ自体は無数に出回っていますがこの位の大きさは記憶では初めて見たように思います。

こちらもほぼ同じ大型サイズのバッグです。隣に並んでいる通常サイズと比較して大きいのが分かります。柄が分かりやすいよう折りたたんだ状態で撮影しましたが実際は円柱状のバッグです。こちらもやはり日本円で2万円以上する逸品です。

対してこちらはモノクロ色のアルアコ族が編み実用品として使用している肩掛けバッグです。ワユーバッグの方は木綿糸を使用しているのに対し、アルアコバッグの方は羊毛を使用している為ごわごわした手触り感です。ワユー族は国内最北の砂漠地帯に多く住んでいるのに対し、アルアコ族は南米大陸最北の雪山・クリストバル・コロン山の麓に住んでいる事から気候帯の違いもあり、その事もあって色使いも異なるのかもしれません。

こちらはコロンビア国内に数多くある伝統工芸品の中でも最高傑作品の一つと言える「モパモパ」細工です。モパモパ細工とは国内南部・ナリーニョ県だけに自生している「モパモパの木」の樹液を煮詰め染料を加えて色付けし、冷ました所で口と手を使い大きく広げて薄く延ばした後、カッターで細かく切って黒地の素材(木材)に貼り付けたものです。カラフルな異なる色の部分は塗ったのではなく全て色付けしたモパモパの樹液を貼り合わせたものです。日本で言えば金箔工芸品に若干似ているかもしれません。細かく且つ芸術的にカットする事が出来る職人の数が減少し、且つモパモパの木自体もこの数を大きく減らしています。将来的には技術の伝承も含め絶滅の危機にあります。画像の二点ですが、手前の壺は日本円で約5万円、奥の皿に至っては何と約12万円もします。

これらは首都ボゴタの北隣にあるボヤカ県やその他各地に伝わる伝統工芸品です。葦の茎を細かく裂いて編み上げたものなど素材は様々ですが基本的にはがっちり編み上げている為丈夫であり、且つデザイン的にも優れたものです。実用品として全くそん色なく使用出来るものです。異なる色の素材を器用に編んでいて芸術的価値のある逸品でもあります。値段的には数千円から数万円するものまであり、単なる民芸品の域を超えた品々です。

この場で紹介するものは全工芸品の中でもほんの僅かです。この他にも逸品は数多くありとても掲載し切れません。コロンビアを訪れる事がありましたら是非ともこれらの民芸品・伝統工芸品をお求めになられる事をお勧めします。