『ラテンアメリカと国際人権レジーム -先住民・移民・女性・高齢者の人権はいかに守られるのか?』 宇佐見 耕一編著 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ラテンアメリカと国際人権レジーム -先住民・移民・女性・高齢者の人権はいかに守られるのか?』  宇佐見 耕一編著


その実効性と適用範囲の限界はあるが、ラテンアメリカにおける自由権と社会権からなる人権は比較的早い時期から各国の憲法や法律で制度的には保護されてきた。しかし、最も保護を必要とする社会的に脆弱な先住民、移民・難民、女性等には不十分であったことが知られている。一般・特定グループを対象に多くの人権保護条約、宣言、声明等が発せられており、それらは国際人権レジームと呼ばれている。本書は7人の政治学等社会科学者と人類学等フィールドワーク研究者による人権レジームについての論考集である。
序章・終章のマクロ的アプローチ(宇佐見同志社大学教授)と、アルゼンチンの高齢者保護(宇佐見)、メキシコにおける家事労働者の労働と人権(松久玲子同大学名誉教授)、メキシコにおける移民/難民の法整備と実態(柴田修子同大准教授)、ペルー南部アマゾン地域における違法採掘問題と先住民(村川淳同大ラテンアメリカ研究センター嘱託研究員)、コスタリカの先住民居住区に生きる人々(額田有美南山大学講師)、ベネズエラにおける人権侵害(坂口安紀アジア経済研究所主任調査研究員)をミクロ的見地からアプローチしている。それぞれの事例のグループの人たちを保護する国際人権レジームは存在しているが、はたして実質的に保護できているか? 問題があるか? を検証し、ラテンアメリカでは国際人権レジームの規範・原則・ルールとその決定手続きが履行あるいは促進レジームではないかというのが本書の検討から得られた知見だとしている。

〔桜井 敏浩〕

 (同志社大学人文科学研究所研究叢書LXIII 晃洋書房 2024年2月 191頁 2,700円+税 ISBN978-4-7710-3794-6 )
〔『ラテンアメリカ時報』2024年春号(No.1446)より〕