執筆者:硯田一弘(アディルザス代表取締役)
今日はパラグアイ農業の方向性に関する記事をご紹介します。
農業国パラグアイだけでなく、世界的に大きな潮流となっているのが、農薬や化学肥料に依存しない自然農法の作物造りですが、パラグアイではイエズス修道会の司祭が中心となって自然農法の推進運動Teko Katuが展開されているというものです。
記事の中にはTeko Katuの定義として、「良い生活」「自由」「健康的」「豊富」「充足」などを充てていますが、パラグアイ政府が提供するグアラニ語翻訳ページで直訳するとTekoは自然、Katuは豊富といった訳語が紹介されます。
https://www.paraguay.gov.py/traductor-guarani
今回、敢えてこれを「自然体」と訳させて貰いましたが、害虫や天候異変等という農作物栽培における阻害要因と自然体で向き合おうという姿勢を感じさせるものなので、こう解釈してみました。
今週は政府系団体による経済成長の維持とそれを支える汚職撲滅のためのシンポジウムという会合にも参加しましたが、経済成長のペースは、過去二十年間で中南米域内では最も早く、各種の経済指標におけるランク付けでも今やチリ・ウルグアイに次いで南米第三位のポジションにあるとのことでした。
汚職撲滅というテーマでは、警察によるスピード違反などの罰金の不透明性を問題視する発言もありましたが、個人の経験として南米諸国のなかでは比較的マシなほうであろうと発言したところ、出席者の多くから賛同の意見を頂きました。
https://www.lanacion.com.py/negocios/2024/03/26/economia-paraguaya-crecio-47-en-el-2023/
先週まとめられた2023年の実績でもGDP4.7%の成長を遂げたことが報じられており、今後もこの流れは安定的に続くという見方が大勢を占めています。
先週はブラジル・パラナ州の有料道路の一部料金所が再開したことをお伝えしましたが、今週はパラグアイにおける有料道路の通行料収入が昨年比で16%増加したことが報じられました。 https://www.lanacion.com.py/negocios/2024/04/04/recaudacion-de-peajes-aumento-16-en-el-primer-trimestre-del-ano/
通行料金は確かに今年から値上がりしており、交通量の増加とともに有料道路通行料も増加していくことが予想されます。ただ、そうした値上げもGDPの成長と同時に支出もインフレ要因も含めて増加する証左であり、値上げも自然体で受け入れられているところが日本との大きな違いであると感じる次第です。
4月も中旬を迎えていますが、今年に入ってずっと揉めている国内政治の最大の懸念事項が、学校給食の制度改革(Hamble Cero=空腹を無くそう)に端を発する問題です。これが取りざたされていく中で、Arancel
Ceroという学割廃止のようなテーマが語られ始め、これに反発した大学生たちが全国で道路封鎖などの抗議運動を展開しています。学生の立場をわきまえているPeña大統領は「学生の特権をはく奪する意思はない」と明言していますが、3月に始まった一部学生による抗議行動は現在も続いています。この背景には、給食事業で甘い汁を吸っていた一部の業者や、反体制のグループによる扇動があるように思われますが、南米ではどこの国でも政府への抗議が道路の封鎖というアクションに繋がるのは困ったものです。
膨大な電力を消費すると言われる仮想通貨のマイニングを禁止するという議会での法案検討が世界的なニュースとして取り上げられていますが、これは正当な契約に基づいて電力を購入している限り、憲法で保証された自由な商行為の範囲内であるとして、否決されるようですが、上の記事ではマイニングに使われるコンピュータ機器649台が不審な方法によって国道を輸送されていたとして警察に押収されたことを報じています。
https://jp.cointelegraph.com/news/paraguay-pauses-progress-bitcoin-mining-ban-bill
今日の言葉arancelは、一般には関税という意味で使われ、隣国との国境が地続きのパラグアイでは不法な輸出入を取り締まるために常時国道での検問が行われており、トラックや商用バンなどの乗り物を運転する際は、荷室に載せてあるものをしっかりチェックしておく必要があります。
基本的には周辺諸国と比べて関税や輸出入手続きを簡素化して、外国からの投資を呼び込み、産業を育成して雇用を促進するというのがパラグアイ政府の方針ですから、国の将来を担う学生の権利保護も含め、成長に向けての前向きな政策が継続するなかで、色々な人達の思惑による混乱も、通過儀礼の一つとして受け止めなければならないのかも知れません。
ところで、混乱が続くベネズエラでは、チャベス以降政権の中核を担ってきたエルアサミ氏が逮捕されました。
現マドゥロ体制というのは、インチキ選挙を繰り返して2013年以降政権の座にしがみついている訳ですが、そのニセ政権の重要人物が逮捕されたということは、盤石だった体制にほころびが生じている証拠かもしれません。7月に設定された大統領選挙も、野党の有力候補への弾圧を強めて体制転覆を阻止しようと躍起になっていますが、アルゼンチン大使館に逃げ込んだマチャド候補達の無事と、まっとうな政権への復帰を期待したいものです。
今週はパラグアイの映画館でアニメ祭りが開催されています。
入場料は一人Gs.20,000≒400円!
既に旧作に属する作品ばかりとは言え、パラグアイにも大勢いるアニメファンにはたまらない企画です。
昭和50年代の学生時代は、足しげく映画館に通い、特に大学生になってからは池袋や新宿・飯田橋の名画座に良く出かけました。今やほぼ絶滅した感のある名画座ですが、ロードショウ料金よりもずっと安く作品が観られるので、予算の限られた学生が映画を通じて外国や過去の文化に触れるには本当に良い場所でした。
パラグアイでは、通常のロードショウでも千円以下の料金で楽しめますので、映画好きにはたまらない国と言えます。
ちなみに南米ではどこでも映画館の入場料金は5ドル前後です。映画館の料金が各国で幾らくらいなのかというサイトを見つけましたので、ご紹介します。これによると円安の日本は先進国の中では比較的安い方であることが判ります。
https://www.numbeo.com/cost-of-living/country_price_rankings?itemId=44
今週は、contigoという単語を選びましたが、これは映画『天気の子』のスペイン語訳”El Tiempo
Contigo”に使われているもの。英語やポルトガル語では、二つの単語ですが、スペイン語ではcon(with)とti(you)が一つになってcontigoという単語になっています。El Tiempo Contigoを訳すと「あなたとの時間」となって、原題とは違ったニュアンスになりますが、作品の内容はこの方がピンとくるかも。英語圏では”Weathering with
You”という題名だそうです。「あなたと耐える」って感じでしょうか。スペイン語のTiempoには天気という意味もありますが、このタイトル名から天気という意味を選択する人は余程のアニメ通でしょう。
右下の”El Niño y la Garza”も「男の子と鷺」ということで、原題とは全くことなりますが、『君たちはどう生きるか』という原題の方が意味不明で判り難く、英語のタイトルも”The Boy and the Heron”と、スペイン語と同じ意味になっていて、作品を観れば納得というタイトルであろうと思います。
今週末のもう一つのトピックスはアスンシオンの河岸道路整備の話。
国土交通大臣がその整備状況について現場から進捗報告をしていますが、アスンシオン周辺の河岸道路が出来上がると、旧市街と周辺地域との往来の混雑が緩和され、渋滞を理由に投資が行われにくくなっている地域での再開発活性化が期待されます。
今週は水にまつわるニュースを多く目にしました。
先ずは先週のコロンビアの首都ボゴタで深刻な渇水による貯水池の枯渇が発生しているというニュース。https://elpais.com/america-colombia/2024-04-18/la-crisis-de-los-principales-embalses-que-abastecen-de-agua-a-bogota-en-imagenes.html
この直後に同じボゴタで大雨による洪水が発生。https://www.larepublica.co/economia/fuertes-lluvias-causan-emergencias-en-bogota-3845314
大雨はパラグアイでも発生して、火曜日にはアスンシオン周辺でも大変な被害が発生しました。 https://www.abc.com.py/policiales/2024/04/24/limpio-arroyos-desbordados-caminos-intransitables-y-gente-atrapada-por-lluvias/
月曜日の衛星写真では、ベネズエラ西部・コロンビア・エクアドルとパラグアイ・ブラジル南部で雨雲が集中している様子が判ります。
一方で、皮肉なことにペルーの首都リマでは飲料水が枯渇していて、34百万人の国民の7%にあたる250万人が飲料水へのアクセスを持たないとのニュースが流れました。
日本の皆さんにとっては、ペルーというと緑に囲まれたマチュピチュのイメージが強く、水が少ないという印象は無いでしょうが、実は人口が集中している海岸部はほぼ完全な砂漠で、真水へのアクセスというのは歴史的にも大きな課題でした。その飲料水問題を劇的に改善したのが大統領時代のフジモリ氏であることは、ペルーに住む人なら全員知っています。フジモリさんが積極的に作ったのが今ではペルーの各地で見られる給水塔です。
以前は右下の写真のように、屋根の上などに載せた樹脂製の樽に給水車が運ぶ水をくみ上げて使うのが一般的でしたが、左の写真のような立派な給水塔を各地に建てたもので、この功績だけでも非常に大きいと言えますが、その後の為政者たちがこの問題を重要視してこなかった為に、250万人が置き去りにされたものとも言えるでしょう。
日本ではなじみの薄い給水タンクですが、米国では地方に行くと地域のシンボル的な存在となっています。25歳の時に研修で米国20州をクルマでドサ周りしましたが、GPSも携帯も無かった当時、初めての街をレンタカーで訪れる際に最も重要な目印となったのが、給水塔でした。
飛行機で北米上空を飛ぶと良く判りますが、多くの街は川や湖沼の周辺に出来ていて、人間が住む場所を選ぶのに最も重視するのが飲み水の確保であるという事を視覚的に理解できます。
一方、水と安全はタダと言われ続けた日本ですが、今週のNHKニュースによると、日本の水道インフラが大幅に劣化していて、これを維持するには大幅な料金の改定が必要になるとされています。
貯水の必要がなく、浄水場からポンプで押し出された水道の恩恵に浴して来た日本でも、地震や洪水対策と共に、安全な飲料水の確保について真剣に考えるべき時を迎えているようです。
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20240425a.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240422/k10014426931000.html
以 上