メキシコ南部オアハカ州は織物、刺繍、陶器などとともに、現在はAlebrijeと呼ばれるカラフルに色づけされた木彫りで名高い。木彫りは精巧というにはほど遠い素朴で簡素なものばかりだが、その何とも言えないおおらかさは不思議な魅力を放っている。
著者は1980年生まれ、2011年にオアハカのおおらかなウッド・カーヴィングに見せられ収集を開始した。本書で取り上げられた130点余の様々な動物の木彫りは、自身の収蔵品のほかコレクターや玩具等美術館等の協力を得て集められもので、これらのカラー写真は見るものを癒やすものばかりである。巻末に制作工房の様子や、芸術教育を専門とする富田 晃 弘前大学准教授によるオアハカでの木彫りの歴史、作者たち、メキシコ系先住民が展開するチカーノ・アートとコレクター、収集美術館などの詳細な解説(国立民族学博物館『季刊民族学』収録論考の再構成)、掲載作品の詳細なリスト、日本で木彫りを見られる博物館等のリストも付いている。
〔桜井 敏浩〕
(安彦幸枝写真 大福書林 2023年9月 160頁 2,500円+税 ISBN978-4-908465-19-2)