『インディアスの破壊をめぐる賠償義務論 -十二の疑問に答える』 ラス・カサス 染田 秀藤訳 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『インディアスの破壊をめぐる賠償義務論 -十二の疑問に答える』  ラス・カサス  染田 秀藤訳


『インディアスの破壊をめぐる賠償義務論 -十二の疑問に答える』  ラス・カサス
染田 秀藤訳 岩波書店(文庫 青427-9) 369頁 2024年3月 1,050円+税 ISBN978-4-00-334279-4

スペインの新世界征服の支配の正当性を否定し、先住民インディオの自由と人権を訴え続けたドメニコ会修道士バルトロメー・ラス・カサス(1484~1566年)は、キリスト教化と文明化の名の下に新世界へ侵略したスペイン人征服者たちによる搾取とインディオ殺戮が日常化している植民地の実態を暴露した『インディアスの破壊についての簡潔な報告』(原書刊行1552年。岩波文庫 2013年)の告発で知られている。ラス・カサスには写本の形で流布し没後2世紀半後に印刷公刊された「1564年にペルー征服にまつわる諸々の出来事およびその結果、ペルーならびにその住民が蒙った害に対する賠償方法に関する諮問を受けて、書き示した回答」というカサス最晩年の論策があり、その『財宝論』ではスペイン国王のインディアス支配権、フェリペ二世が下したエンコミエンダ永代所有権化決定を否定し、植民地化の中で行われたエンコミエンダ制等で略奪行為を働いたすべてのスペイン人たちを糾弾、本書『疑問』では先住民にたいする賠償義務の履行方法を具体的に提示している、当時のスペイン人植民地社会を震撼させた警世の書。カサスについて多くの著訳書を出している訳者による詳細な解説が、本書の意義の理解を助けてくれる。

〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2024年夏号(No.1447)より〕